鈴村健一、声優業界は無限の可能性「一番マルチなお仕事」の今 “向上心の塊”の売れっ子たち 【AD-LIVEインタビュー】

『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』『銀魂』などの人気アニメに出演し、櫻井孝宏や #東山奈央 などが所属する事務所の代表も務めている声優・ #鈴村健一 (46)。そんな彼が主宰・総合プロデューサーを務める、人気声優たちが出演する即興舞台劇『AD-LIVE』(アドリブ)が今年も開催される。名前を変えながら2008年から行われており、これまで森久保祥太郎、 #梶裕貴 、関智一…30人以上の人気声優たちが出演してきた。「全員に共通して言えるのは『新しいことに貪欲で向上心の塊』」と過去の出演者を振り返る彼に、声優業界について聞くと「今、声優業界は面白い世界だと思っていますし、無限の可能性がある世界」と話す。第一線で活躍する立場から、声優という“表現者”にとって大切なことを語ってもらった。

■『AD-LIVE』伝えたい“芝居”の本質 即興劇の“エンタメ化”構想は20代のころから

『AD-LIVE』は、大まかな世界観と舞台上で起こるいくつかの出来事が決められているだけで、出演者のキャラクター(役)、セリフは全てアドリブで紡がれる。何が生まれるのかわからない要素と、予め決まっているいくつかの出来事の化学反応により、その日その瞬間、その場だけの感動と衝撃のドラマが生まれることが、ファンの間で人気となっている。

——10年以上、公演してきた『AD-LIVE』ですが、即興劇の魅力は一体なんでしょうか。役者として長時間、アドリブで演じることは大変だと思いますが、観客に伝えたい思いを教えてください。

【鈴村】 『AD-LIVE』の魅力は、役者と観客含め何が起きるかわからないハラハラ感など、バラエティー要素だと思います。ただ、私自身が一番やりたいことは、お芝居の原点をやりたいと思っています。

石ころにつまずく芝居をすることの難しさを例に話すと、人は石ころに気づいてないから転びます。しかし、芝居になると石ころがあると認識した上で、つまずかないといけない。それが非常に難しいんです。我々役者は、いかに石に気づいていないようにそれが偶然起きたかのように転ぶことが大切となり、それをコントロールするトレーニングを日ごろからしています。

即興劇は、自分の想像を超えたことが起きて、それを役で乗り越えていくのですが、その過程で石ころが生まれてくる可能性は多々あり、予定調和に石ころが置かれないので、すべての物事に役で反応しなくてはいけません。役として生のリアクションが生まれる瞬間を観られるのが即興劇。役作りがしっかりとできていれば「確実にエンタメになる」と思いました。『AD-LIVE』は20代のころに構想があり、30代になって実現した形です。即興劇はバラエティー要素と、お芝居の本質を含んでいるので、『AD-LIVE』ではその魅力を観客へ伝えたい思いがあります。

■森久保祥太郎、梶裕貴…新しいことに貪欲な人気声優陣 『AD-LIVE』出演後の達成感に中毒性

——櫻井孝宏さん、岩田光男さん、森久保祥太郎さん、梶裕貴さん、関智一さん…と、数多くの声優が『AD-LIVE』に出演してきました。出演したみなさんの反応はどういうものなのでしょうか?

【鈴村】 出演前やオファー時、みなさん口をそろえて言うのが「大変そうだな…」です(笑)2014年公演のキャスト陣は最初、「面白そう!」と乗り気だったのですが、本番当日を迎えると「あれ? これは大変なんじゃないか?」とソワソワしているのが印象的でした。ただ、「大変だ!」と言いながらもやり終えるとみなさん喜んでいました。森久保祥太郎君は公演終了後に握手をしに来てくれて「面白かった! いい経験になったよ! ありがとう! また、呼んでくれよな!」と言いながら爽やかに帰ったのを覚えています(笑)

梶裕貴君も印象的です。今でこそ何でも演じることができるスーパースターですが、当時(2014年)は声優界の若手でしたので、お客さんたちも「梶君、こういうのできるの?」という見方でした。ですが、その下馬評を覆す見事なお芝居を見せてくれて、本人も声優業以外の仕事ができてプラスになりました」と出演できたことを喜んでくれました。今の彼は声優業界のためにテレビドラマやバラエティー番組に出演していますが、「声優業界の認知度を上げて盛り上げたい。声優の本業以外から役者として得ることもある」という考えを当時から話していました。そんな彼から感謝の言葉をもらった時は、主宰としてうれしかったです。

——今のエピソードを聞くと、『AD-LIVE』出演で役者としての自信、新たな発見があるなど、出演者側から見ると得るものが多くあった印象を受けました。

【鈴村】 2016年公演に出演していただいたベテランの堀内賢雄さんは、当時、還暦直前で、「還暦前なのに、こんなハードルが高いイベントのオファーをよく俺にしてきたな!」と言われたのを覚えています(爆笑)。そんな堀内さんが最後、うれしそうに「呼んでくれてありがとう。キャリアに対してまだ向き合える部分、新たな発見があったよ」と感謝されました。てらそままさきさん、高木渉さんも同じようなことを言ってくれました。

出演者のみなさん全員に共通して言えるのは「貪欲」だということ。まだ、役者として「できること」を探していると言いますか、向上心の塊なんです。ベテラン、若手みなさんそうで、公演後に「新たな発見があった」と言ってくれる方が多いです。 #前野智昭 君は「毎回、最初はオファーを断ろうと思うこともあるのですが、とてつもない達成感があってやめられない!」と言ってくれます。

■マルチ化進む声優業 高いタレント力がそろう今、求められる「ハードルが高い」

——『AD-LIVE』に出演している方々の活躍を見ると、表現力以外にも現状に満足しない「貪欲さ」を感じました。メディア露出が増えている中、トークの切り替えし、場の空気の読み方を見ると、即興劇にも必要な“機転”や“瞬発力”が、声優には必要なことだと思いました。

【鈴村】 表現の仕事に「これだけやっておけばいい」ということはありません。声の仕事がメインの「声優」も、指示されたことに反応する体だったり、役を表現できる技術力など、役者として欠かせない“お芝居の基本”が必要なのは間違いないです。

役者として必要となっていくのは、表現力のほか個性や人間力、物事に対して興味を持つということです。役者は警察官や医者などさまざまな職業、赤ちゃん、石ころなど背別や年齢、種別すらも超えて演じなくてはいけません。これらを演じる際、常識からは外れたイメージする力が必要なのです。あらゆることに首を突っ込み、興味を持つことが人間力を大きくすると思います。

今、あらゆる表現メディアにおいて、一番マルチなお仕事は「声優」だと思っています。ラジオ、ドラマ、舞台、歌唱、司会業、ナレーションやアニメ、洋画の吹き替えなど、すべてやることができ、僕ですらこれを全てやっています。舞台やドラマの俳優さんの中で、以上のことを全てやっている人を探すのは難しいでしょうし、経験している人は相当少ないと思います。その中でこれらを全て経験している声優は多くいます。声優はマルチプレイヤーになりつつあって、タレント力が極めて高い人が声優になっていることは事実です。各分野で高いレベルで仕事をしている方々も増えているので、これから声優になる方々は、ハードルが高いと思っています。

ただ、この華やかな現状だけを見ないでほしいです。経験談や業界を見ている立場として、演技の勉強をした延長線上にしか、これらの仕事はないからです。僕はラジオのトークは芝居のメソッドの1つだと考えており、「人の話をよく聞いて、それにリアクションをする」ことが大切。バラエティー番組の司会は、同じように「人の話を聞いて、場の雰囲気を感じ取り、どうコミュニケーションをとるか」、これもお芝居の基本です。発声の基本トレーニングは歌でおこなうので、歌の仕事と向き合えばセリフへ活かせます。演技に対しての理解力、基礎を積まないと、さまざまな仕事にチャレンジすることはできません。声優の活躍がさまざまな人に届いているのは、「表現力」があるからなのです。

声優としてお芝居をずっとやり続けてきた中で、磨き続けてきたものをほかの仕事に生かしている感覚であり、ほかの仕事をやることで役者として成長する部分が多々あり相互関係にあります。バラエティー番組の仕事をしたことで私は、『おそ松さん』のイヤミみたいなギャグキャラクターを演じられたと思っています。今、声優業界は面白い世界だと思っていますし、無限の可能性がある世界です。『AD-LIVE』に出演している方々は、みなさんお芝居の本質を理解し活躍しており、そんな彼らのお芝居を観て私も新たな発見があり面白いのです。

■『AD-LIVE 2021』公演概要

今年のテーマは「if〜建前と本音〜」。「もし、あのときの選択が違ったら人生はどうなっただろう…」。そんな誰もが思い描く「if」の世界を二幕構成で展開する。物語は一幕、二幕ともに同じ設定で展開されるが、キャストは一幕では「建前」を、そして二幕では「本音」を演じる。

ユメノスケ役のCVを鈴村が務めるほか、東京公演(J:COMホール八王子)の9月4日は木村昴、杉田智和、9月5日は諏訪部順一、吉野裕行、埼玉公演(三郷市文化会館)の9月25日は畠中祐、 #八代拓 、9月26日は榎木淳弥、森久保祥太郎、大阪公演(メルパルク大阪)の10月9日は下野紘、前野智昭、10月10日は蒼井翔太、安元洋貴が出演。チケット価格は全席指定7500円、全国の劇場でライブ・ビューイング、各配信サイトでのライブ配信も実施する。

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