『パワポケ』という野球ゲーム界の異端児はどのように作られてきたのか? アプリ版『実況パワフルプロ野球』のイベントとして復活する同作について開発メンバーに話を伺ってみた

 シリーズ累計2350万本の売上、スマホアプリ版は4400万ダウンロードという、すさまじい記録を誇る株式会社コナミデジタルエンタテインメントの野球ゲーム『実況パワフルプロ野球』(以下、『パワプロ』)シリーズのなかで、ユーザーたちの記憶に残り続けるゲームがある。

 1999年に『パワプロ』の携帯ゲーム版としてリリースされた『パワプロクンポケット』(以下、『パワポケ』)シリーズだ。

 プロ野球界ではかつて、「記録の王、記憶の長嶋」という言葉があった。ホームランの世界記録を持つ #王貞治 と、昭和天皇の眼前でのサヨナラホームランなど、ここぞという場面で結果を残してきた #長嶋茂雄 の両雄を称える言葉だが、まさに『パワプロ』が記録に残る作品だとするなら『パワポケ』は記憶に残る作品だと言える。

 年に1作品ペースでリリースが続き、2011年の『パワポケ14』を最後に新作の登場はない。しかし、一度でもプレイしたユーザーたちの中にはそのシナリオに打ちひしがれ、生涯忘れることのない体験をした人も少なくないだろう。

 特に、本家パワプロにも搭載されている、ゲーム時間で約3年間をかけてプロ野球選手を育成する「サクセス」モードのシナリオのバラエティ豊富さは圧巻。また、Googleでは、「パワポケ」と打ち込むと「バッドエンド」、「トラウマ」などのサジェッションワードが出てくるほど、壮絶なバッドエンドの多いシリーズである。

 シナリオ内では悪の組織が暗躍しがちで、キャラクターが理不尽な目にあい、ゲームオーバーになることもしばしば。ダークな要素も多く含まれるが、そのシナリオのクオリティの高さには定評があり、根強いファンが多い。

 さらに、野球選手としてプロを目指すサクセスとは別に「裏サクセス」があるのも本作の特徴。第二次世界大戦の日本軍、ファンタジーRPG世界、忍者、人間と魔族の戦い、『STAR WARS』風宇宙モノなど、毎回異なる世界観とシステムで、もはや野球はどこへいったんだ……と思わせる。

 『パワポケ』とは、本編とは異なるシステムのゲームが遊べるうえ、シナリオは高レベルという、独自の進化を遂げていったシリーズなのだ。

 そんな『パワポケ』が、2月25日から『パワポケアプリ』とのコラボイベントで復活する。『パワポケ7』で人気だった「花丸高校」シナリオが実装され、甲子園ヒーロー編のヒーローやキャラクターたちが登場する。

パワポケ7で人気だった「花丸高校」シナリオが登場!(前回のパワポケコラボ第1弾ではシナリオ実装なし)

【「花丸高校編」ストーリー概要】
ヒーローたちの活躍のおかげで強くなった花丸高校。
しかし、ヒーローたちに野球部を占領され、一般野球部員のオレたちは普段の練習もままならない状況。
そんな時、ある博士の協力で得た謎の部品で、練習用ロボットを組み立てることに成功するのだったが・・・
パワプロクンポケット、「甲子園ヒーロー編」のヒーローやキャラクターたちが「花丸高校」とともに登場!
【ポイント】
練習場所に色や数字の違うカードを置くことで、様々な効果の練習用のロボットを組み立てられるぞ!
また、カードを使うたびに増えるスクラップを消費することで、練習に配置する以外に「カード」コマンドで様々な用途に。
ヒーローを超えるパワーアップを目指せ!!

 電ファミニコゲーマーではこの機会に、『パワポケ』制作陣にインタビューを敢行。これまで攻略本などで語られてきた内容も含みつつも、インターネット上には『パワポケ』制作者たちの声がほとんどないため、ウェブにアーカイブするという点で、非常に貴重な機会となった。

 あらためて、シリーズが作られたきっかけや印象に残っている作品、アプリのコラボイベントには、過去作のどんな要素が詰め込まれているのかなど、さまざまな話を聞いた。

取材・文/森 祐介
編集/ishigenn


『パワポケ』は4人のベテランが集い始まった

──自分は中高時代から『パワポケ』をやり込み、攻略本も熟読していました。今回は2003年発売の『パワプロクンポケット大全』(一作目から『5』までの情報を収録した公式ガイドブック)を手元に持って、取材に臨んでおります。

西川直樹氏(以下、西川氏):
 我々3人は写真が写ってるんちゃう?

※西川 直樹
シナリオ担当。『パワポケ1』から『14』まで全てのシリーズに携わる。パワプロアプリにおいても一部のシナリオを担当。

萩原千香子氏(以下、荻原氏):
 うわ、嫌や〜(笑)。

※萩原 千香子
『パワポケ3』から『14』までのシリーズに携わる。当時はデザイナーとしてキャラクターのイラストやUIを担当。現在『パワプロアプリ』ではデザインリーダーを務め、主にデザイン全般のクオリティ管理を担当。

三浦陵介氏(以下、三浦氏):
 もう20年も前なので、西川さんは30代後半、僕と萩原さんは20歳そこそこの頃ですかね。

※三浦 陵介
ディレクター。『パワポケ3』から『14』までのシリーズに携わる。当時は一部シナリオ、裏サクセスとミニゲームを担当。

──そうなんです。開発者インタビューのページに写真が掲載されていて、何度も読んでいたので、お話を聞けて大変うれしいです。まずお聞きしたいのは1999年に『パワポケ』の第一作が発売された時期のことでして、シリーズが生まれた経緯とコンセプトについて教えてください。

西川氏:
 まずは携帯ゲーム機で『パワプロ』を作ることになって、『パワプロ』チームのベテラン勢4人を引き抜いてチームができたのが、プロジェクトのはじまりです。求められたのはゲームボーイカラーで動く『パワプロ』。

 そこで、ゲームボーイカラーではどんなことができるんやと調べてみたら、なかなか難しいことがわかったんですね。言われたとおりに何も考えずにつくってたら面白くないゲームができあがるのがオチやと思ったので、どうすればいいかと頭を絞った。

 テキスト表示ならゲームボーイでも力を発揮できるから、ストーリーを重視すればなんとかなるんじゃないかと。そういう感じでコンセプトを固めていったんです。

──1作目のサクセスは『パワプロ5』のスピンオフ的なストーリーで、物語の舞台は『パワプロ』シリーズ初期にはおなじみの極亜久高校でした。

西川氏:
 『パワプロ5』の制作にも関わっていて、『4』まではシミュレーションぽかったんですが、この『5』からいっきにサクセスのストーリー性を高くしていたんです。甲子園を目指す物語で、批判も多かったんですけど。

──僕は『パワプロ99』から始めたので、ストーリー性が高いサクセスを自然に受け入れていたのですが、当初はどんな批判があったのでしょうか。

西川氏:
 パワフル“プロ野球”なのに「なんで高校生の話をつくるんや」となかなかの批判を受けたんですよ。そこは一生懸命、野球といったらプロ野球と甲子園が二大テーマなんやと主張して、ようやく『パワプロ5』ができた。

 ところがユーザーさんからのお手紙を見たら、極亜久高校の外道【※】にものすごく腹を立てた人が多かったんですね。僕としては、「いや、彼らにもそれなりの事情があったかもしれへんやろう」といった気持ちがあったので、それなら極亜久高校を舞台にして、外道たちを主人公の友だちにしたらどうかと考えていた。「極亜久高校は、ほんまに悪いヤツらやったんか?」ということを言いたかったんです。

 考えが足りない、生活が苦しい、悪い人に騙されているなど、やむを得ない事情で敵に回したキャラクターも多いけど、「そいつらにも事情があるんや……」というのが、シリーズを通しての一貫したテーマになったと思います。

※外道:
外藤侠二(がいどうきょうじ)
『パワプロ5』以降、『実況パワフルプロ野球』シリーズ及び『パワプロクンポケット』シリーズに登場する。主人公の高校と同じ地区にある極亜久商業(のちに極亜久高校に変更)の野球部員。サクセスでは主人公に対する妨害工作を行い、ケガをさせるような危険行為もある。また主人公のライバルキャラのひとり猪狩進が、外藤のしかけたバナナの皮で転んで、車にはねられる展開もあった。

──理不尽な展開で、野球ゲームとは思えないほどたくさんのキャラクターが死ぬ展開が用意されていて、ダークなシナリオも多いのがシリーズの特徴だと思います。『パワプロクンポケット大全』では、別のスタッフが「つくってる人たちがひどいヤツらなんです(笑)」と冗談で語っていますが、そのあたりはいかがでしょうか。

西川氏:
 チームができた経緯からもわかると思うんですけど、もともといた4人が年寄りなんですよ(笑)。三浦くんと萩原さんがフレッシュな感じで入ってくれたけど、最初の4人は人生で嫌な経験もたくさんしてきて、現実に対して斜めから見るクセがついてるのはたしかですね。

バッドエンドで鬱展開を作りたいわけじゃない

──『パワポケ3』あたりからダークな展開が増え、ギアが1段上がったように感じたのですが、意図的に変えた部分もありましたか?

西川氏:
 いや、意図的ではないですね。単純にシステムが出来上がった次の作品では、余裕ができてイベントが増えたってことじゃないかと思います。

──なるほど。僕は『パワポケ2』からプレイして、ここではまだ物語の舞台もプロ野球チームで、そんなにトラウマ展開も多くなかった印象でした。唯一、彼女候補の(小角)弓子が急展開で死んじゃった時に、かなり驚いた記憶がありますけど。彼女の死体があるホテルごと燃やされるという物騒な展開で。

西川氏:
 首切り球団のドリルモグラーズが舞台【※】で、経営不振でどんどん足切りをするから2軍の選手たちがレギュラーになる話ですね。最終的にプロペラ団に吸収されるオチやったかな。

 『パワポケ2』では、彼女候補のキャラが死ぬような展開はあまり作った記憶がないですけどね。1作目で(四路)智美が死ぬのは覚えてますけど、スパイの末路はああいうものと決まっているので。

※ドリルモグラーズ
 『パワポケ2』で初登場する、NPB所属という設定の架空のプロ野球チーム。万年最下位の弱小球団で、オーナーの方針から、サクセスでは1年目に大規模リストラ敢行、2年目には2軍が消滅、3年目には日本シリーズで優勝したとしても解散してしまう。

──『2』の弓子はたしか……。

西川氏:
 ああ、思い出した。秘書をやった曽根村が社長からひどい扱いを受けて怒って乗っ取りを企む話ですね。社長の息子に罪を着せるためにボディガードに殺させる。ああ、死んでましたね。犯人、僕やった(笑)。主人公がちゃんと家まで送れば、助かったはずです。

 ああいう話って、別に鬱展開を書きたいわけじゃないんですよ。ハッピーエンドを楽しむためには、バッドエンドはとことん悪くしないといけないから。

──オチの前のフリを利かせるためにも。

西川氏:
 ハッピーエンドをハッピーにするためには、バッドエンドが徹底的に悪い方がいいと、別のインタビューで語ったこともあります。『パワプロ5』の(猪狩)進の件でも同じで、中途半端にやるよりは、徹底的にやったほうがいい。

 『パワポケ』シリーズでも鬱展開をつくりたいわけじゃなくて、ストーリーを作っていると、自然とああなっていったわけです。公序良俗には反しないようにしてたつもりなんですけど。エッチな方面にはあまりいかなかったけど、キャラクターの死に関してはちょっと麻痺していた部分もあったかもしれないですね。

「エゲツない世界」の背景に“仲間を大勢失った先祖”

西川氏:
 大昔の話になりますが、私の先祖は自分なりの考えを持っていたんですが、仲間を大勢失ったことで「私の考えは間違ってました」と自分から宣言したんですね。最初に聞いた時は、「うちの先祖、仲間を裏切るなんて卑怯者や!」と思った。

 でも後から考えたら、抵抗できない状況下にいれば仕方のないことですよね。そんなことを日常的に考えてたことが、『パワポケ』シリーズにも反映されてるかもしれないです。

──『パワポケ』シリーズのシナリオがダークな理由として、そんなエピソードがあったとは。腑に落ちた感じがあります。たしかにゲーム内では、権力者たちから理不尽な目に合う展開がたくさんありますよね。

西川氏:
 それは現実世界がえげつないから、それを反映させたらどうしてもダークになってしまうと。

──萩原さんと三浦さんは、若くして入ったチームで一緒に作りながら、そういったシナリオをどう感じていたんですか?

三浦氏:
 ダークな要素は、放っておいても入っていきましたね(笑)。私が担当するパートではあえて入れないように話を書くこともありました。メインストーリーに絡まない彼女候補のキャラクターを担当することが多かったので、たとえば『パワポケ7』の(倉見)春香【※】を担当した時は、できるだけ不幸な目に合わないイベントにしようと考えてました。

※倉見春香
『パワポケ7』のサクセス(謎の転校生 甲子園ヒーロー編)で初登場。主人公の1年後輩で、受験票をなくして困っていたところ、主人公に助けを求めて知り合った。イベント数が多いにもかかわらずバッドエンドがない、『パワポケ』シリーズでは非常に珍しい彼女候補のキャラクター。

萩原氏:
 当時、私は完全に真っ白な状態でチームに入ったので、すごいところに来てしまったという気持ちもありました(笑)。「これも社会勉強や」と言われながら、黒い何かを植え付けられながら育っていったというか。

 “市場調査”“社会勉強”ということで、普通の人は立ち寄らない場所まで連れていってもらい、いろんなことを勉強していって、今の私がある。

西川氏:
 報道やドラマには出てこないけど、世の中にはこういうところがあると知っておいたほうがいいこともありますからね。

──木村さんは『パワポケ』好きがこうじてコナミに入社されたとのことですが、最初にやったのはどの作品ですか?

木村和久氏(以下、木村氏):
 最初は『パワポケ3』でした。うちにテレビが1台しかなくてテレビゲームをやらせてもらえなかったんですよ。そこで携帯ゲームの『パワポケ』をやり始めました。さきほど、携帯機で『パワプロ』を、という戦略だったという話がありましたが、まさにそのニーズの典型だったと思います。

 シリーズが出るたびにやってきて、毎回全然違う世界観で虜になって。最初にやった『3』では、「なんかみんなすぐ死んでいくな……」と思ったのを覚えてます(笑)。

※木村 和久:
プランナー。『パワポケ』好きが高じて株式会社コナミデジタルエンタテインメントに入社。今回『パワプロ』アプリの『パワポケ』コラボでプランナーを担当。

──『パワポケ3』だと、小学生の(大宮)由佳里が、手術のお金が足りなくて死んでしまう展開は多くのユーザーのトラウマになっていると思います。

木村氏:
 子どもの頃は何回やってもお金が足りなくて死んじゃったので、大人になってからやっと救えるようになって、自分も成長したなって感じた覚えがありますね。

『パワポケ8』以降はメジャー路線も盛り込むが…

──『パワポケ8』あたりからは、普通にシナリオを進めるだけだとそこまでダークな展開にならず、彼女候補キャラのシナリオを進めると、急に過去作同様になる構成になったと感じました。これは意識した変化でしょうか。

西川氏:
 たしかに意識はしていた気がしますね。普通にプレイする限りは、ややこしい要素を出さないようにしようと。世界観と歴史は『1』から『14』までつながっているけれど、「前作を知らないとわけがわからない」という意見もあったので、彼女ルートなどで深いところまでいかない限りは、前作とのつながりを見せないつくりにしたと思います。

三浦氏:
 たしかに、そんな感じで作っていたと思います。

──逆に深い部分でのバッドエンドのダークさはアップしましたよね。

西川氏:
 どうでしょうね。僕は、昔のほうが強烈なバッドエンドが多かった記憶があるんですけど。ニンテンドーDSになってからは、そんなひどいシナリオは書いた覚えがないですね。あ、メロンパン【※】は置いときますけど(笑)。

※メロンパン
『パワポケ12』に登場する彼女候補のキャラクター、パカーディ・ハイネのルートのバッドエンドの通称。政敵に捕獲され、脳髄のみを培養液の中で管理され、永久に苦痛を味合わう生き地獄というトラウマ展開が繰り広げられる。脳みそが培養液に浮かぶイラストが、『トリビアの泉』(フジテレビ系)の投稿特典である脳を模したメロンパンに似ていたことが、命名の由来とされている。

──『パワポケ8』からはハードがニンテンドーDSになりましたが、その点でなにか変えたことはありましたか?

西川氏:
 やっぱりニンテンドーDSになったタイミングで、メジャーになって売上を増やしたい気持ちがありました。そしたらちょっとは行儀よくしようかと思うじゃないですか。でも内面からにじみ出るものはごまかせないから、どうしてもダークな要素はあったかもしれませんけど。

萩原氏:
 世の中全般というか、エンタメ業界の空気感もかなり変わってきてたこともありますよね。

──ユーザー側からみればそこまで大きく変わっていなかった気もするので、抑える意識で作っていたことに驚きです(笑)。

西川氏:
 いきなり変えるのは無理なんでしょうね(笑)。昨日までホラー映画を撮っていたのに、今日から急に勧善懲悪モノを撮れっていわれても難しいですから。

──それが作家性なんだと思います。

「タノシイナ♪」が生まれた背景

──反響が大きかったシナリオや思い入れが強い作品などを教えてください。

三浦氏:
 反響の大きいバッドエンドでいえば、「タノシイナ♪」【※】かな。

西川氏三浦氏萩原氏
 やきゅうができてたのしいな。

──ハモリましたね(笑)。

※タノシイナ♪:
『パワポケ7』のバッドエンドのひとつ。主人公たちは花丸高校へ入ってきた助っ人の「ヒーローズ」が悪の秘密結社「ワルクロ団」と組んでいることを知り打破しようとするが、野球の試合に負け失敗。洗脳され、野球を楽しむことしか考えられないようになってしまう。子どもが描いたような野球を楽しむ主人公たちの最後の1枚絵と「しあわせ」という歪んだ文字がプレイヤーたちの心にトラウマを刻んだ。

西川氏:
 なんでああなったんだっけ。「ヒーローだから殺すことはしないだろう」、「それなら記憶を飛ばす?」、「でも記憶を飛ばしたら辻褄が合わない」、「じゃあアホになるんちゃう?」みたいな話だったような。

萩原氏:
 それで洗脳されてしまいました、と。

──シナリオとイラストのインパクトも相まって、シリーズ屈指のトラウマ展開となりましたね。

一同:
 (笑)。

萩原氏:
 よくわからないうちに、みんなの心にトラウマを植え付けてしまったみたいですね。

──作っている段階では、そこまでの反響を予測していなかったと。

萩原氏:
 一切予想してなかったですね。

西川氏:
 いや、ちょっとは思ってましたよ。これはウケるやろうなと。

三浦氏:
 でも、あそこまでの反響とは思ってなかったですよね。

西川氏:
 バッドエンドのひとつの形態だと思っていたくらいで。

木村氏:
 当時のユーザーの僕からすると、ヒーロー戦が難しすぎて全然勝てなかった記憶があります(笑)。野球も強いし、最後のミニゲームもめちゃくちゃ難しい。

西川氏:
 紅白戦はまだ勝てるけど、最後のロボットがきついんよな。

三浦氏:
 最後のミニゲームは練習ができないので、慣れるまでに時間がかかるぶん難しいですかね。

開発チームに宿る「ユーザーを驚かせるイタズラ心」

──『パワポケ』シリーズはサクセスが2種類あることに加え、ミニゲームの種類も豊富で1作につき3〜4本入っていることもあり、制作陣にとってはカロリーが高い仕事だったのではとも思いますが、そのあたりはいかがでしたか?

西川氏:
 そうなっていったきっかけは、『パワポケ2』で戦争編【※】を入れたことですね。たしか僕のアイデアだったと思うんですけど、当時のディレクターがホワイトボードに日本兵姿の凡田君【※】の絵を描いて全員に大ウケだったから、「決定!」となったんです。

 それが成功して、表サクセスに対する裏サクセスをつくるのが恒例になっていった。野球に収束せざるを得ない表に比べて、裏はいろいろ好きなことができるので、みんなノリノリで作っていた気がしますね。しんどいけど、やりがいはありました。

※戦争編
 『パワポケ2』の裏サクセス。野球の試合も練習もない、野球要素ゼロの裏サクセスの走り。主人公が第二次世界大戦の世界にタイムスリップして、補給部隊員としてさまざまな戦場に送られる。実際の出来事がモチーフになったイベントも多い。
大本営は比較的安全だがたまにゲリラの襲撃をうける「北方戦線」、交戦の確率が高い「西方戦線」、危険な任務が多くマラリアや赤痢など病気にかかる可能性が高い「南方戦線」、ある条件を満たすと登場する「呪い島」の計5箇所を行き来して、生き延びるのが目的。パラメータは「体力」と「ツキ」の2種類で、それぞれ生存確率に影響。任務の種類によって筋力などがアップし、41週以上生存すると大本営での「帰還」が可能になり、選手登録が可能。
西川氏は『パワプロクンポケット1・2公式ガイドコンプリートエディション』にて、「映画か何かを見て腹立ったことがあるんです。取ってつけたように戦争はいけませんよ、というような教訓話で。『戦争はそんなもんちゃうやろ! よし、俺が戦争のツラさを教えちゃる!』」と語っている。

※凡田君
凡田大介(ぼんだ・だいすけ)。『パワポケ2』に初登場。『パワプロ』シリーズおなじみの、メガネ一族。主人公と同期でドリルモグラーズに入団。貧乏生活でお昼ごはん代を削ってでもおもちゃを買うマニアなキャラクター。

三浦氏: 
 タイトルは野球だけど、それ以外のことが何でもできるので、めちゃくちゃ楽しく仕事をしてた記憶があります。個人的には、ミニゲーム『ハコdeグチャッ』【※】が『5』と『13』で2回実装されて、反響があったのが印象に残ってます。アクション、パズル、レース、シューティング、RPG……と自分のアイデアをどんどんゲームに入れられるので。

 毎年3本から4本はミニゲームがあったので、ネタを出すのが大変でした。ぱっと思いつくときはぱっと出て、実装もできたんですが。作ってみて、どうしても面白くならないってときは困ったな。

※『ハコdeグチャッ』
『5』『13』で登場した、落ちものパズルゲーム。主人公を操って、上からオチてくる色付きのブロックを壊したり、動かしたりして3つ並べるとブロックが消える。落下したブロックに潰されるか、ブロックが画面上部まで積み上がると失敗。

──特に困った例は?

三浦氏:
 なんだろう。ぞうきんがけレース(『10』のミニゲーム「ぞぞぞぞうきん」)かな。やってもやっても面白くならなくて、どうしようかなと。結局、面白く仕上げることが出来なくて、「すみません面白くなりません」って当時のディレクターに謝りました(笑)。(笑)。

萩原氏:
 私が印象に残ってるのは、けっこう好きなゴキブリのミニゲーム【※】。ちびっこたちにトラウマを植え付けたみたいで。

※ゴキブリのミニゲーム
 『6』の「ゴキビューン」。縦スクロールのシューティングゲーム。レーザーと通常弾の打ち分けが可能な殺虫剤を使ってゴキブリを倒していくとパワーアップアイテムや点数アイテムが手に入る。ゴキブリのサイズは3種類で、ボスは画面におさまらないほどの大きさ。ゴキブリが苦手な人にとっては、強い嫌悪感もあるゲームで、難易度は高くレベル4では並のシューティングゲームとは比べ物にならない高難易度。

一同:
 (笑)。

西川氏:
 ゴキブリが潰れた絵は芸術的やったな(笑)。

三浦氏:
 僕はゴキブリを見たことがなかったから抵抗なく実装したけど、嫌いな人は嫌だっただろうな(笑)。

萩原氏:
 別に本物のゴキブリが好きなわけじゃないので、実際に遭遇したら最悪ですよ! イラストもイメージで描いてたけど、やっぱり普通な展開だと面白くないので、みんながびっくりするだろうなって思いながらつくってました。

西川氏:
 本編でも、このゲームに行く導入が強引やったからね。プレイしたユーザーがしばらく口をぽかーんとしてほしいなと思って、ああなった。

 『3』でも、「なんじゃこりゃ、サイボーグになってるやんけ!」、魔神を出してみたら「願い事を叶えてくれるんじゃなくて、こっちにやらせるんかい!」と、毎回ユーザーを唖然とさせたいイタズラ心を持ってました。

萩原氏:
 みんなでわいわい言いながらミニゲームをつくるの、楽しかったですよね。

西川氏:
 アホなアイデアを出しまくって、それが採用されるもんね。

萩原氏:
 子どもはこれが好きだろうと考えてつくってたので、バラエティに富んだものがどんどん生まれていったという。汚い話ですけど、『パワポケ6』では肥溜め【※】が……。あれも狂ったミーティングでしたよね。

※肥溜め:
 ミニゲーム「走って走ってうんダバダー!」。縦スクロールのレースゲーム風のシステム。お腹を壊した主人公がダッシュでトイレを探し、制限時間内にトイレに駆け込むゲーム。障害物として鳥のフンや肥溜めなどが登場する。

西川氏:
 ああ、あった、あった。もとはレースゲームで、落とし穴を肥溜めにしたらどうやという発想で。何回も入ってしまううちに、主人公がどうでもよくなって、動きが速くなっていくっていう発想が笑ったな(笑)。

木村氏:
 今回、あれをアプリでも入れたいって人もいましたよ(笑)。

──ミニゲームは単体で発売されても人気が出るのでは……? と思うレベルのゲームもあり、スマホアプリがあればぜひ買いたいと思うものも少なくないです。

RPG、戦闘システム、例のアレ……全てに思い入れがある

──『パワポケ大全』によると、『パワポケ4』の裏サクセスのRPGが生まれたのは、萩原さんが馬のモンスターを描きながら「RPGをつくりたい」と言い出したことだったとか。

萩原氏:
 まったく覚えてないんですけど(笑)。ただ私は昔からRPGのゲームを作るのが夢だったので、モンスターの絵を描くのが好きだったんですよ。それを当時のディレクターが見て、「じゃあつくる?」とわりと軽いノリで実現したって感じだったかな。

 『MOTHER』シリーズが好きで、ちょっと不思議な世界を作るのが夢だったので。それとはちょっと違う感じになりましたけど、影響はありました。

西川氏:
 『MOTHER』も実はけっこうダークな要素があったよね。すでにそういうゲームもあったから、ちょっとした黒さを入れておくことには、そんなに抵抗がなかった気がします。

──萩原さんは、RPGをつくりたいという夢を『パワポケ』で叶えたかたちだったんですね。

萩原氏:
 そうですね。そのRPGを作りたい気持ちを、全力ぶつけ続けた感じです。本当にもう、これでもかというくらい。

──『2』から『14』まで、さまざまな裏サクセスのシナリオがありましたが、思い入れのある作品はありますか?

西川氏:
 「『パワポケ』はいつも野球をしてへん」とよく言われてたので、それならと思って宇宙編【※】では最後に野球をやったろうやないかと思って、変形したロボで大統領の野球対決を入れました。あれは自分でも好きやったし、喜んでもらえた感覚もありましたね。

※宇宙編:
 『パワポケ9』の裏サクセス「スペースキャプテン編」。アドベンチャー、アクション、RPG、公益シミュレーションなどさまざまな要素を兼ね備え、歴代裏サクセスの中でも難易度が高い。星間戦争を乗り越えるべくつくられた宇宙連邦が、いつしか利権を追い求めて肥大化。宇宙ステーション「ルナリング」のパイロットである主人公が、経済制裁として資産凍結、医薬品全面禁輸措置を受けたため、250日以内に50宇宙トンの量のワクチンを集めるため、宇宙船でさまざまな星に旅立つ。システム面ではテーブルトークRPG『トラベラー』、世界観などは『STAR WARS』が元ネタとされている。

萩原氏:
 私はごりごりファンタジーが好きだったので、宇宙編はそこまでノッていなくて(笑)。無理やりファンタジー要素を入れたら、思いの外いろいろ表現できた気がします。

西川氏:
 宇宙編はファンタジーとの親和性、悪くないと思ってたからね。星に着いてからはちょっとファンタジーっぽかったやんか。「大航海編」(パワポケ13の裏サクセス「海洋冒険編」)も思い入れはあるしな。

──個人的には探偵モノが好きなので「大正編」(『パワポケ7』の裏サクセス『大正冒険奇譚編』)も楽しんでプレイしました。スタッフの中に探偵モノが好きな人がいたんですか?

西川氏:
 冒険モノをやりたかったから、「探偵がええんちゃうか」というくらいでしたね。あれも毛色が変わってて好きやったな。大正時代にした理由、なんやったかな。

萩原氏:
 洋風ファンタジーは飽きたから、和風がやりたいよねと。最初は陰陽師という案もあったけど、私はもうちょっと違うのがよかったんです。それで文明開化で明るい大正時代はどうかって話を聞かされたのかな。

西川氏:
 アイスクリームなど、いまおいしいものはだいたい大正時代にはすでにあったよな、という話から始まって。近代に変わったところで、話づくりとしても時代としてちょうどいいんですよね。武器も、和風と洋風の両方が使えるから。

萩原氏:
 いま、ちょうど世の中的にも流行ってますね、大正時代。

三浦氏:
 個人的に思い入れがあるのは『13』の裏サクセスの戦闘システムですね。これまでのシステムから変えようという話になりました。それまではコマンド制だったんですが、オート進行しつつ少し介入するってシステムで、面白くできないかとつくりはじめて。面白くなるまでは試行錯誤を繰り返しましたけど、最終的には面白くまとまったと思います。シリーズの戦闘システムでは、一番のお気に入りですね。

 ほかには「秘密結社編」(『パワポケ12』の裏サクセス)も。システム面でものすごくこだわったけど、そのぶん泣きをみました(笑)。

西川氏:
 時間がなかったよね。最後の調整が間に合わなくて、もうちょっと時間があれば……って。同じことを毎回言っていたけど(笑)。

──「秘密結社編」での泣きを見たというのは?

三浦氏:
 2周目のラスト、魔王を倒すところの難易度が難しくなりすぎてしまったんです。発売後にめちゃくちゃ後悔した……。

萩原氏:
 秘密結社編では、グラフィック面で私も魔王を描くのが大変でした。ドットでどこまで描けるのかという挑戦という意味では、デザインの面で印象に残っているシリーズです。

三浦氏:
 『パワポケ11』の裏ボス【※】とどっちが印象的ですか?(笑)

※『パワポケ11』の裏ボス
裏サクセス「怪奇ハタ人間編」クリア後のストーリーに登場する裏ボス「あれ」。宇宙人が地球の情報を研究して「子どもの崇拝する神」をモチーフとした姿で、なにかのパチモノでニセモノでオマージュ。これ以上は……各自でお調べください。

萩原氏:
 「あれ」については、何もいえないです……。

一同:
 (笑)。

三浦氏:
 悪ノリの結果なので、そっとしておきましょうか。

萩原氏:
 結晶というか、ポリープというか。

西川氏:
 ……まあ、とりあえずみんな楽しんで作っていたということですね。

萩原氏:
 すべてに思い入れがあるといってもいいくらい、楽しかったですね。

──秘密結社編が収録された『12』はニンテンドーDSで、ハードの性能が上がるぶん、デザイナーとしては書き込み量が増えるわけですよね。

萩原氏:
 性能が上がると解像度も上がるので、書き込み量も格段に多くなりますね。

──体感として、ハードが変わるとそれまでの何倍くらい大変なのでしょうか。

萩原氏:
 難しいですけど……。ハードが変わるたびに、地雷ゲームが出てることが物語ってるかなと思います。

西川氏:
 要するに、ゲームボーイからゲームボーイアドバンスに変わった『3』、そこからニンテンドーDSに変わった『8』などのタイミングでは、プログラムをまるごと作り変えるので、しんどいから裏サクセスが作れなかったんです。

三浦氏:
 しんどいから裏サクセスは無理、どうしよう、よし地雷【※】だ!と(笑)。

※地雷:
『パワポケ3』で登場した裏サクセスモード「ドキドキ地雷パニック!」のこと。「サクセス」本編と同様に作り込まれた「裏サクセス」が多い『パワポケ』シリーズだが、こちらのモードは単純にマインスイーパー風のミニゲームをするストーリーのないモードとなっている。

──ハードが変わるとシステムを作り込み、その次のタイトルからはシステムを流用できるから、またミニゲームなどが充実するってサイクルだったわけですね。

西川氏:
 そうです。でも文句を言われるのは嫌だから、『8』のときはちょっとだけ大正編の続きみたいなストーリーを差し込みましたね。

アプリ版『パワプロ』を見て「タッチ操作でもよかった」

──ハードが変わるたび、野球のゲームシステムもどんどんアップデートされました。ゲームボーイの時点では、この性能で野球は難しいと判断してシナリオが充実していったとのことでしたが、野球ゲームとしての手応えはどのあたりから感じていましたか?

西川氏:
 野球の面では、「これで完了!」と思ったことはなかった気がするけど、ニンテンドーDSになってからはずいぶん変わりましたかね。

萩原氏:
 大きく変わったタイミングでいえば『10』ですかね。ここから3Dグラフィックスが使えるようになって、だいぶ進化した。プロモーションも野球押しで頑張っていた記憶があります。

──『10』からはwi-fi対戦もできるようになりましたよね。

西川氏:
 あれ、そうだっけ。

萩原氏:
 ……。

三浦氏:
 『8』からできなかったかな。いや、『10』からだったか……。みんな野球部分の記憶が薄いな〜(笑)。

西川氏:
 すみませんが、野球のシステムをメインでタッチしてたスタッフがここにいないので。

萩原氏:
 もしかすると、ミニゲームや裏サクセスの方が思い入れが強かったのかも(笑)。

木村氏:
 『10』のときは、ユーザーとしては『パワプロ』より野球のシステムがいいなって思ってましたよ。『パワプロ14』のころだったと思うんですけど、「球が早すぎてぜんぜん打てない!バランスがおかしい」とファンの一部が言っていた時期がもあって。『パワポケ』の方がバランスいいやんとなった気がする。こんなこと言っていいのかな(笑)。

西川氏:
 そういえば、ニンテンドーDSでタッチパネル方式になったとき、じつは今の『パワプロアプリ』に近いシステムが考案されてたんですよ。当時はなぜ採用しなかったかというと、簡単に打てすぎるからと考えてしまった。でも今考えると、簡単に打ててよかったんです。それはシリーズが終わってから、「あ、しまった!」と思ったところで。

──スマホゲームの『パワプロアプリ』や『プロ野球スピリッツA』は、ただタッチするだけで簡単に打てるモードがありますね。

萩原氏:
 『パワプロアプリ』の開発の初期にも関わってましたけど、片手での操作を重視してましたね。電車の中で気軽に簡単にできるようにって。

西川氏:
 『パワプロアプリ』を見て目からウロコでした。『パワポケ』を作っているときはそれがわかっていなかった。そんな簡単に打てたらゲームにならんやろうと。本当にミスでした。

──簡単に打てて爽快で楽しい方向にシフトしたら、また違うゲームになっていた可能性もあったわけですね。

西川氏:
 もしかしたら、『14』で終わらなかったかもしれないですね。

萩原氏:
 タッチ操作でいいと思ってたなんて話、今初めて聞きましたよ。そんな気持ちがあったんですね。

アプリのイベントとして『パワポケ』がふたたび復活

──色々と聞いてきましたが、『パワポケアプリ』で『パワポケ』コラボイベントがあり、ある意味では『パワポケ』の続きともいえるわけで、シリーズのファンはぜひやってほしいということですよね。

西川氏:
 流れとしては、木村くんがメインで担当したキャラクターの人気投票があって、そこで神条紫杏が1位になったので、イベントキャラとして登場したのが2020年4月のコラボイベントでした。けっこう評判が良かったので、またやってみようかというのが今回のコラボイベントです。

木村氏:
 ユーザーの声を反映したかたちでのコラボとなっています。

──今回は過去作のどんな要素が入っているんですか?

西川氏:
 過去作を彷彿とさせ、思い出補正も含めて楽しんでもらいつつ、新しいシステムも入れてこれまでにないかたちになっています。狙いとしては、これまでに出たキャラクターの別の側面を描けるのではと試してみた部分もあって。

 たとえば天本(玲泉)さんでいうと、『4』ではメインストーリーにがっつり縛られていたので、あんまり自由じゃなかった。恋人になった天本さんはどんな行動をするだろうかと考えて、ifの世界として過去作のファンの方には喜んでもらえるかなと思ってます。

──評判がよければ、また次のコラボもあるかもしれない?

三浦祖:
 そうですね。1回、2回と続いたので、3回、4回目……という話になるかもしれないですね。

──『パワポケ』シリーズのファンとして、思春期に単なる勧善懲悪ではないシナリオを体験することで、大きな影響を受けたと思っています。『パワポケ大全』のインタビューにて、西川さんは「どんなに年をとってもアナーキーなものを作り続けると誓います」と語っており、非常に感銘を受けました。

西川氏:
 正直にいうと時代も変わって世の中的に難しい部分もありますけど、個人的にはまだまだ戦う気持ちは持っています。アプリの方でもオブラートには包みつつ、それなりに出してるとは思いますので。

──オブラートからにじみ出る部分を楽しみに、コラボイベントをプレイします! 本日はありがとうございました。

(了)


 悪の反対は善、善の反対は悪じゃ。「正義」の反対は、別の「正義」あるいは「慈悲・寛容」なんじゃよ──。

 これは『パワポケ7』に登場する、自称・悪の天才科学者の黒野鉄斎の言葉だ。『クレヨンしんちゃん』の野原ひろしの名言として紹介されがちだが、こちらが元ネタである。

 インタビューで語られた、「彼らにもそれなりの事情があったかもしれへんやろ…」というテーマは、中学生で初めて『パワポケ2』をプレイした体験は筆者の心の中に、確実になにかを残していたように思う。

 大上段に構えるなら、弱肉強食とは名ばかりの、権力者へ取り入った者のみが勝つ現代において、「彼らにもそれなりの事情があったかもしれへんやろ…」という視点は社会に最も欠けているものである。たとえば、ホームレスや生活苦で電車のレールに飛び込んだ人たちは、本当に“努力”が足りていなかったのだろうか(もし万が一、仮にそうだとしても見捨てるべきではないけど)。

 国家、人間、貧富差など、世界中で分断が大きくなっているなか、もっとも必要なのは、「正義」の反対は、別の「正義」あるいは「慈悲・寛容」だという認識だ。

 大げさにいってしまえば、自分ばっかりが正しいと思ってるヤツらは全員、「『パワポケ』を『1』から『14』までやってこい!」と言いたくなる。もし仮に世界中の人が『パワポケ』を全シリーズ遊んだなら、ほんの少しは平和に近づくのではないか。半分は冗談だが、半分は本気である。

 『パワプロ』という間口が広い人気ゲームシリーズにアナーキーな要素を入れ込んだことで、とても広くまでその影響が及んだ『パワポケ』を見習って、筆者もポップな題材で人をひきつけつつ、アナーキーな要素を入れ込む企画を出し続けたい。今回の取材を通じて、あらためて強くこう思った。

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『パワポケ』という野球ゲーム界の異端児はどのように作られてきたのか? アプリ版『実況パワフルプロ野球』のイベントとして復活する同作について開発メンバーに話を伺ってみた