2021年、日本アニメが世界トレンドへ飛躍する節目の年に

 2020年の最大ヒットコンテンツとなった『鬼滅の刃』。原作コミックは最終23巻で1億2000万部(電子版含む)を突破、アニメ映画は国内歴代最高となる興行収入を記録した。19年4月のTVアニメ化を契機に、異常ともいえる急激な盛り上がりを見せ、20年に入ると、様々な企業とのコラボレーションにも発展して空前絶後のブームに発展した。『鬼滅の刃』製作委員会の1社であるソニーグループは、長年かけてアニメや漫画(ウェブトゥーン)、ゲームといった2次元コンテンツ展開を包括的に進めてきた。『鬼滅の刃』の勢いに乗って、2021年はいよいよ世界市場を視野に入れた本格的な動きも生まれてきそうである。

■2次元コンテンツビジネスのお世界展開をハンドリングできる体制を整備

 2021年は日本の2次元コンテンツ(アニメや漫画、ゲームなど)の歴史に新たな1ページが刻まれる節目の年となりそうだ。

『鬼滅の刃』の社会現象化の背景には、製作委員会に名を連ねる、アニプレックス、その親会社であるソニー・ミュージックエンターテインメント(以下SME)のナレッジの積み重ねがあった。そして、国内と同時進行で海外においても人気が拡大しつつある中、新たな動きが加わった。アニメコンテンツを核に200の国と地域で配信サービス展開し、9000万人を超えるアニメファンを抱える北米企業のクランチロールが、ソニー傘下に迎え入れられることになったのだ。

 20年12月10日、ソニー・ピクチャーズエンターテインメントとアニプレックスの合弁会社であるファニメーションは、米AT&Tワーナーグループ子会社のEllation Holdingsの買収を発表した。これにより、同社運営のクランチロールはAT&Tワーナー傘下からソニー傘下へと移ることになる。国内でのこれまでの成功は、ヒットを量産できるソニーグループの連携体制が鍵となったことは言うまでもない。それを世界市場に広げるべく、約1200億円に上る買収額でクランチロールを手に入れたわけである。ソニーは20年上半期に営業利益、純利益ともに過去最高を2年ぶりに更新しており、21年3月通期予想で最終利益8000億円を見込む上方修正を行ったのも、『鬼滅の刃』特需が業績を大きく押し上げたからと言われている。そういう中でのクランチロールを買収は、申し分ないタイミングでもあったと言えよう。

 近年、インターネット動画配信サービスの普及やEコマース、ファン・イベントの急成長などによって再び「アニメブーム」が起きていることもあり、ソニーグループは、世界の日本アニメビジネスで一挙に攻勢に出ている。17年には、『ドラゴンボールZ』や『ONE PIECE』『進撃の巨人』など日本アニメを取り扱う北米のプラットフォーム・ファニメーション(Funimation)を約165億円で取得。そして、19年9月には、ソニー・ピクチャーズテレビジョン(SPT)とアニプレックスが、両社傘下の日本アニメ配給・配信事業の3つの会社の事業統合を発表している。

 SPT傘下のファニメーション、アニプレックス傘下のフランスのアニメ配信事業会社ワカニム(Wakanim)、そしてオーストラリアを拠点にする日本アニメ事業会社マッドマン・アニメ・グループ(Madman Anime Group)の統合により、配信だけでなく、劇場配給、パッケージ、グッズ、イベントといったさまざまな展開が可能なアニメ配給・配信ビジネス網が誕生している。今回のクランチロール買収はこの流れにあり、『鬼滅の刃』をはじめとするアニメの世界配信やグッズ販売、イベント展開などに貢献している北米のアニメサービス2大勢力を傘下に収めることで、2次元コンテンツビジネスの世界展開をハンドリングできる体制が整う、というわけである。

■世界のインフルエンスブランドにTikTok、Spotifyと並んで日本アニメがランクイン

 世界市場において、2次元コンテンツを扱う配信事業の成長は著しい。世界最大の定額制サービスを展開するNetflixもここへきて、日本のオリジナルアニメを強化している向きがある。15年にNetflixがローカル拠点をアジアで最初に東京に置いたのも、アニメに期待してのことだった。ローンチ前に同社CEOのテッド・サランドスがフランス・カンヌのMIPCOMのキーノートでそう明かしていた。実際に日本発のNetflixアニメ作品は『BLAME! (ブラム)』(17年)を皮切りに製作本数が右肩上がりで増えている。Netflix東京にはアニメ専門のクリエイティブチームも置かれ、漫画原作の『バキ』などNetflix日本発アニメ作品が、各国で総合トップ10入りするという実績を作っている。アニメの視聴数は年々増加傾向にあり、20年は前年より50%増えた全世界1億以上のNetflixメンバーがアニメ作品を再生するまでに成長している。

 Netflixのような総合コンテンツを扱うグローバルなプラットフォームの棚にアニメが並び、日常に視聴するコンテンツの1つとして選択肢に入っていく意味合いは大きい。日本アニメが、一部の熱狂的なファンに支持されるコンテンツから、世界トレンドへと大きく飛躍していく可能性を秘めているからだ。10年代前半までは世界的なヒット作と言えば、ハリウッドばかりに集中していたが、近年ではNetflixの快進撃もあり、各国ローカル制作のドラマも世界ヒットにつながる動きが出ている。こうした事実を鑑みても、日本アニメ、ひいては2次元コンテンツの世界トレンドへの飛躍も決して夢物語ではない。

 それを裏付けるデータがある。ライセンスビジネスの業界誌最大手の『ライセンスグローバル』誌がこのほど発表した、インフルエンス力の高いブランドを予想する「The Influentials」レポートの最新版によると、TikTok、Spotify、Zoomなどと並んで「アニメ」が挙げられており、20年以降、世界トレンドのトップブランドに大きく成長すると紹介している。10年前の2010年版では、カートゥーンネットワークのヒット作『アドベンチャー・タイム』がランクインしているが、これはあくまでも北米が生み出したキッズ向けアニメ。今回の「アニメ」とは、クランチロールなどが発信し続けてきた日本アニメを中心とする大人も楽しめるアニメであり、マーチャンダイズに広げ、ファンコミュニティも形成できるブランドとして注目されたわけである。

 先のソニーやNetflixの動きからみても、コロナ禍において盤石なインフラ体制は大きな強みとなるはず。国内市場だけでなく、世界市場においても日本の2次元コンテンツを一挙ヒットに導く準備は整った。あとは第2の『鬼滅の刃』となる2次元コンテンツのクリエイティブの創出にかかっている。
(文・長谷川朋子)

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