【ひろゆき × 小沼竜太 対談】”童貞”力がコンテンツの伸びしろの鍵を握る!? ネット時代のコンテンツの売り方とは?

 電ファミの記事に度々登場する、リュウズオフィス代表取締役・小沼竜太氏による著書『伝え方は「順番」がすべて: 分単位のコミュニケーションが心を動かす』が発売された。

(画像は伝え方は「順番」がすべて〜分単位のコミュニケーションが心を動かす〜 (光文社新書) | 小沼 竜太 | 産業研究 | Kindleストア | Amazonより)

 本書は『Fate/Grand Order』『ペルソナ』シリーズ、『真・女神転生』シリーズなどのマーケティング戦略に携わる小沼氏が”ゲームの宣伝屋”として、このご時世にどのようにゲームを売ればよいのか、それを「伝え方」に特化して綴ったものである。

 今回はなぜか「2ちゃんねる」の開設者で知られるひろゆき氏をお呼びして対談を行い、本書の宣伝をすることになった……のだが、本書の話題以上にコンテンツやコミュニティに関する議論が白熱。

ひろゆき氏

 『ドラクエ』新作を売るための最強のキャッチコピーとは? コンシューマゲームと違って、なぜソーシャルゲームはIPとして成長しにくいのか? あまり自分の仕事を語らないひろゆき氏が語った、「2ちゃんねる」をゼロから育てるためにしたこととは? 小沼氏がひっそりと語る「そのコンテンツがその後伸びるかどうか」を見極める指標とは?

 示唆に富む話題がアクロバティックかつ高速に展開していくなかで、インターネットやSNSが極度に発達した現代で、どうやってコンテンツを売り出していけばよいのかという本書のテーマも掘り進められていく。
 小沼氏はゲームプロモーション、ひろゆき氏はウェブサービスと全く異なる分野にも思えるにもかかわらず、それぞれのプロとしての視点が交差することで意外な共通点が見えてくるという、大変興味深い内容となった。

聞き手/TAITAI
文/tnhr
編集/実存


『伝え方は「順番」がすべて』というタイトルは伝わりづらい?

ひろゆき氏:
 どんな感じで始まるんですかこれ。

小沼竜太氏(以下、小沼氏):
 とりあえず今回の対談の目的は、「僕の本の宣伝をしたい」ということですね。川上量生さんと雑談していたときに「誰かと対談したいです」って言ったら、「ひろゆきさんと対談なんかどう?」というところから始まっています。

ひろゆき氏:
 はあ。でも川上さんって”ひろゆきさん”って呼ばないですよね(笑)。

──そうですね(笑)。

小沼氏:
 正確には「”ひろゆき”でいいんじゃね」と言われました。

ひろゆき氏:
 小沼さんの本なのに、なんで平さんと川上さんが協力しているんでしょうか。

小沼氏:
 僕がN高等学校で、この本を元にしてゲームのプロモーションについての授業を担当する予定なんですよ。率直に言えば、その授業が盛り上がるためにも本が売れてくれた方が良い。そういう流れですね。

──僕の方は、インタビューや対談するならってことで、声をかけられて。小沼さんひろゆきさんの対談なら面白そうだからいいかなって感じでした。

ひろゆき氏:
 なるほど、了解です(笑)。

ひろゆき氏

「3秒で」パッと目に止まってパッと気にさせないといけない

──ひろゆきさんが小沼さんの本を読んで、「ここはその通りだな」とか「ここは違うんじゃないの」と思った箇所がありましたら聞いてみたいです。

ひろゆき氏:
 一通り読んで、「大体そうだよね」という感想で落ち着いちゃったんですよね。細かい現場まで知っているわけではないので、具体的にどうこうというより、全体や前提の話になっちゃいますけど……。

 小沼さんの仕事は、もうキャストが揃ってて製品もある程度出来上がった状態からお願いされるから、関わるのが後半の方じゃないですか。僕の場合は事業組み立て型なので、そもそもパーツを作る人がいないし完成させなければならないというところから始まるんですよ。

 なので、「順番が全て」と言ってしまえる程に恵まれている環境やプロジェクトって、果たしてそんな多いのかな、と疑問に思っています。

小沼氏:
 ものづくりやものを売るという大きな流れで言うと、ひろゆきさんはまさに一番最初の工程の担当で、僕は一番最後の工程担当ですよね。だからこそ、伝え方の重要性を強調しています。

ひろゆき氏:
 小沼さんに「作品の制作に関わらない」というポリシーがあるから、そういう切り分けかたができるのかなって気もするんですよね。

小沼氏:
 そうかもしれないですね。

小沼竜太氏

ひろゆき氏:
 あとから制作に口を出し始めると、「もう少しクオリティ上げた方がいいよね」とか「これできる人材居ないよね」とか、足りないものが目につくようになってくるので。

──話題を作るとか、何かを仕掛けるという観点で言うと、ひろゆきさんって話題そのものをゼロから考えて、足りないパーツを組み合わせるところから始めるじゃないですか。

 一方で小沼さんは今ある素材を解釈して、伝え方をちゃんと順序立ててやりますよね。ふたりに共通するのは、「何か話題を仕掛けることが得意」だという点なんだと思います。

ひろゆき氏:
 そんなにやり方違いますかね?

──違いませんかね。

ひろゆき氏:
 ゲームでは発売期間が終わっちゃえばプロモーションもいったん終わりですけど、僕が作るネットサービスの場合は、口コミの回転をいかに一生懸命作れるか、それが10年間でどう育つかです。プロモーションをやるにしても、10年間テレビCMを打ち続けるのは無理じゃないですか。

 ネットサービスの場合は、SNS上でどう伝わるかというか、「その人がどう感じて、それを他人にどう伝えたいと思うか」というコアがないと、ネットサービスって広がらないんですよ。その辺りの考え方は、小沼さんと似ているのかなと思いますけど。

──そういう仕掛け方みたいなものって、ひろゆきさんの場合はどう作るんですか。

ひろゆき氏:
 ドワンゴ時代とかによく言っていたのは、「このサービスを3行で説明して」ですね。面白いものって、「こんなとこがいいよ」とか「女の子が可愛い」とか、ゲームで言ったら「爽快感が凄い」とか「難しいから面白い」とか、必ずキーワードで短く説明できるはずなんですよね。

 それができないサービスって、やってみたら面白いかもしれないですけど、まず伝わらないです。なので、「分かりやすくする」というのは何かとスタッフに言っていた気がします。

 その点で言えば、リュウズオフィスが担当していた『世界樹の迷宮』みたいなマニアックなゲームってやってみないと面白さが伝わらないので、ウェブサービスプロモーション系の僕には不得意な分野な気もします。

小沼氏:
 そういう意味で言うと、僕は「3秒で伝える」のが大事だと思っています。特にSNSなんかでは、3秒も見ないじゃないですか。それぐらい短い瞬間でも、パッと目に止まって、パッと気にさせる。どんなめんどくさいゲームであっても、そのようなポイントを見つけてあげないといけないんです

 分かりやすい例えを挙げてみようと思います。今から僕は、最強の『ドラクエ』新作のキャッチコピーを言うので聞いてください。

 『ドラゴンクエスト12発売決定』

ひろゆき氏:
 まあ、買いますわな(笑)。

小沼氏:
 でもそういうことなんですよね。

ひろゆき氏:
 そうですよね(笑)。

小沼氏:
 でも、これが最強なんですよ。それぐらい端的に伝えなければいけないんですよね。こういう伝え方を、常に悩みながら探しています。

──『ドラクエ』の例はたしかにわかりますけど、逆に何者でもないゲームを伝えていくためには、どのようなことをしているのでしょうか。最初はそのタイトル名を出しても響かないし、3行で説明するにしても他との差別化まで含めて説明するのは難しいじゃないですか。

ひろゆき氏:
 まあ、やりようだと思うんですよね。僕はスクエニの『ブレイブリーデフォルト』が割と好きなんですけど、あれは「『FF3』みたいなゲーム」という触れ込みで知ったんですよね。だからすぐに「好みに合いそうだな」と思いました。「何々みたいなやつ」って売り出し方は、割と伝わりやすいんじゃないかなと思うんですけど。

小沼氏:
 そこはひろゆきさんの言うとおりですね。全く新しくない、シリーズものでもないゲームを売るときは、そのゲームを構成している要素の中で一番わかりやすいもの、たとえば「『FF3』みたいな」とか、そういうものから探してあげます。つまり、「すでに世の中にある言葉」に置き換えてあげるイメージです。

「これ面白いよ」と伝えるのが仕事なら、マーケターよりインフルエンサーになったほうがいい?

──ここ10年から15年、それこそインターネットが出てきてから今日までで、情報の伝わり方というものはかなり変わってきていると思います。おふたりはその変化をどのように捉えているのでしょうか。

ひろゆき氏:
 誰もがネットに書くようになったので単に情報が可視化されるようになったというだけで、情報の伝わり方の基本構造はネット以前とさほど変わっていない気がしてます

 たとえば地方のちゃんとした情報を得ることのできない人たちが住むところでは、アムウェイみたいな商売が流行ったりするじゃないですか。そんなん買ってもしょうがない、お金払ってもしょうがないよって、情報強者の人は思うんだけど、情報弱者コミュニティーは必ずどこかに存在するし、未だにそのようなものが売れてしまう。

──これだけネットが発達して、情報もオープンになっているのにも関わらず、まだまだ情報弱者的な人々がいるのってなぜなんでしょうかね。

ひろゆき氏:
 人類ってそういうもんなんじゃないんですか。

──今は #フェイクニュース だとか、正しくない情報も増えてしまったじゃないですか。そういう影響もあるのかなという気もしますが。

ひろゆき氏:
 「正しい」と「正しいと信じる」は別のことなんですよね。「神様は居ないよね」というのは正しいじゃないですか。でも、「みんなが正しいと信じているもの」というのは、その証拠がなかったとしても居るものは居るということになっていますよね。人間ってそういう生き物なのかなという気はしていますけど。

──正しい情報があっても、間違った情報を信じてしまう人たちが一定数いると。

ひろゆき氏:
 間違った情報でもないんですよね。「正しいと信じたい情報」なんですよ。

 たとえば「親子の愛情は必ずあるか」という議論で、愛情はあると人は信じたいけど、一方で本当に愛情なんて感じていない人もいるんですよね。そのような感じで、信じたいと思っているものを実際に検証してみようというのも別の話なので。

──小沼さんの本にも書いてあるように、「情報の揮発性が高くなってしまった」ということについてはひろゆきさんはどう思いますか。

ひろゆき氏:
 揮発性と言うか、情報の変化は速くなったなと思います。でも、なんだかんだ言って判断基準は変わってない気がするんですよね。

 同じ趣味趣向の人が集まっているのって、その中で「良いと言われたものは良い」と信じたい気持ちがあるからじゃないですか。友達が「これ面白いよ」と言っていたから、それに手を出すみたいなことです
 つまり、他人の言ったことを真に受ける方が、人間楽だよねというのがずっと続いているんじゃないかという気はします。人によって言葉は違いますけど、そういう集まりを「トライブ」とか「クラスター」と呼んでいますよね。
 逆に、トライブやクラスターに所属しないで、毎回毎回自分で調べて判断している人の方が少数派だ思うし、もっと言えばそんな人は全体の1%も居ないと思いますよ。

──とはいえ、ネットやSNSの発達によって、ネット以前の時代よりは人同士の繋がりや集まりの精度は拡張しているじゃないですか。

ひろゆき氏:
 規模は大きくなったと思います。だけど、たとえばゲームブログを書いている人の言うことを信じるか、近所のゲームに詳しいお兄さんの言っていることを信じるのかって、「どっちの信憑性高いか」はあんまり関係ないと思うんですよね。客観的な信憑性よりも、結局はその情報を正しいと信じたいかとどうか、というところに行き着くと思うんですよ。

──この辺の話を聞いて、ゲームのプロモーションに関わっている小沼さんはどう考えますか。これを踏まえて取り組んでることとか、打っている手はあるんですか。

小沼氏:
 今ひろゆきさんがお話されたことには、100%同意です。僕も、人間は大昔の洞窟で暮らしていたときから変わっていないと思っています。自分の村の部族の誰それさんが言っていたから、あそこの狩場にはマンモスがいっぱいいるだとか。

 でも、これって厳密には信憑性があるかどうか分からないじゃないですか。でも現実的には、自分の部族の人間の言うことなので、信じると思います。逆に言うと、自分の部族じゃない人の言うことは信じないですよね。

 ただ、インターネットとSNSの発達によって、情報の伝達速度がとにかく上がったのは確かです。場合によっては個人の発言であっても、それが世界中に広まることもある。
 僕の仮説ではその速度が変わったから、単純に情報の変化や消滅のスピードも速くなったんじゃないかと思うんですけど、情報の伝わり方の本質は変わっていないはずです。未だにこの仕事ができているのも、世の中の変化は速いけど本質は変わっていないからだと思いますね

ひろゆき氏:
 その話で言うと、小沼さん自身が部族の長になって部族を大きくしちゃったほうが、仕事はめっちゃ楽になりませんか。

 要は「小沼さんが『これ面白いよ』って言うなら信じる」という層ができればよいのでは、ということです。いわゆるインフルエンサーと呼ばれている方々はみんなそれをやっているわけで。現にインフルエンサーに勧められたものは「本当に良い商品だ」ってみんな喜んで買って、みんな幸せという状態になっているじゃないですか。

小沼氏:
 僕がやっていることって、“オススメ”ではないんですよね。その作品の魅力を見つけてあげて、それを人に伝えられるようにするという仕事なんです。だから、それって僕自身が発信者になることとは全然違うんですよ。

ひろゆき氏:
 小沼さんがやっていることって、「こういう風な視点で見ると面白いよ」という視点の提供じゃないですか。何も情報がない状態で面白いってこともあるんですけど、大体は「こういう風に楽しんだら面白いよ」と教えてあげる場合が普通ですよね。
 小沼さんがその視点を与えて「このゲームはこの視点でやってください。」「ほら楽しいでしょ。」というのは、部族の長がやっていることじゃないの?という疑問があります。

小沼氏:
 舞台で言えば、僕は芝居をする役者ではないですよね。インフルエンサーが役者なんですけど、僕はそうではなくて脚本家だったり、演出家だったりです。

ひろゆき氏:
 映画監督って、出演しないけどみんな映画監督の名前で映画を観るじゃないですか。裏方の名前の方が人を動かすようになってくる状況というのは、すでに発生していますよね。

 だから、小沼さんブランドを徐々に大きくしていった方がビジネス的にも楽なはずなのに、それはしたくないみたいなオーラをさっきからずっと出していますよね。

小沼氏:
 そういう意味でいうと、宣伝というカテゴリーでは自分自身は陰に潜んでいるべきものだと思っている節があるかもしれません。

ひろゆき氏:
 でも表に出た方が上手くいくんだったら、表に出た方が良くないですかね。

小沼氏:
 ゲームの場合はあくまで作り手が主役だと思っているので。作り手を差し置いて、自分が前に出ようという気は全然ないですね。

ひろゆき氏:
 ゲームってプロデューサーやディレクターは名前が出ますけど、本当の意味で作り手であるエンジニアの名前が表に出ることってほぼないじゃないですか。

 たとえば『ドラクエ』で堀井雄二さんが実際どこまで関わっているかって、ユーザーからは分からないですよね。本当に「作り手を表に出す」ということが正しいのであれば、もっと出るはずだと思うんですけど、実際はそうじゃないのかなって気はするんですよね。

──僕もそこはひろゆきさんの意見に賛同します。今ゲームを売るという観点で言えば、ゲームのプロデューサーが喋るより、人気のYouTuberが紹介したほうが効果が断然に高かったりするじゃないですか。小沼さんはそのへんはどう捉えているんですか。

小沼氏:
 インフルエンサーの出現と発達は、ゲームにとってはすごくいいことだと思います。しかし一方でビジネスの観点から言うと、裏方のマーケターの仕事を否定する存在であるとも思っています。

 あれこれ細かいこと考えて緻密な作戦を練るより、有名なあの人に紹介してもらった方が分かりやすく売れるという時代が来てますよね。

 だからすごく難しいんですよね。インフルエンサーは僕の知っている世界とは別のところから誕生してきた人たちだと思っています。もちろんそういう人とも仕事はしますし、お願いもしますけれども、根本的に僕がやっていることとは異なる道だと思っています。

 インフルエンサーが良い悪いというより、インフルエンサーがフィットする製品もあれば、フィットしない製品もあるということです。

なぜソーシャルゲームのIP化は難しいのか?

──ゲーム業界でソーシャルゲームが台頭してきて、社会現象と呼べるくらい人気になりましたよね。そのタイミングで『パズドラ』や『モンスト』がIP化に挑戦したじゃないですか。

 サービスとしてはすごく人気だけど、巨大IPとして育ったかどうかとして見ると、まだまだ微妙な立ち位置ですよね。結局、スクエニや任天堂のようなメジャーなコンシューマメーカーが会社として強いのは、ゲームそのものの品質もあるんだけど、「資産としてのIP」がかなり積み上がっているからだと思うんです。それが旧来のゲーム会社と新興の会社の大きな違いではありますよね。

 『パズドラ』や『モンスト』だって、相当たくさんの人の目に触れて遊ばれているのに、IPとして定着することが難しいのはなぜなんだろうって疑問なんです。

小沼氏:
 旧来型の会社と新興の会社という対比というより、どちらかというとビジネスモデルの違いに起因しているんじゃないですかね。

 たとえばですけど、『ポケモン』にお金を払うタイミングっていつだと思いますか。

ひろゆき氏:
 『ポケモン』だとゲームを買うときですね。

小沼氏:
 ですよね。つまり、体験の”前”に払うか、”後”に払うかなんですよ。パッケージゲームはゲームを遊ぶ前にお金を払うけど、いわゆるソーシャルゲームは遊んだ後に、ガチャを回したくなってからお金を払う。

ひろゆき氏:
 お金を払うってことは、「これを買う価値があるんだ」って自分自身に思い込ませちゃっているわけですよね。「そのゲームが面白かった」と思い込みたい、なぜならもうお金を払っちゃったから。

小沼氏:
 そういうことです。つまり、「前払い」の場合は事前に幻想を作らないといけないんですよ。これは「俺の求めている体験に合致する何かだ」という幻想を持ってお金を払ってもらう。

──なるほど。映画などもそうですけど、「面白そう!」という期待値そのものをマネタイズするって話ですよね。

ひろゆき氏:
 僕の仮説だと、ソーシャルゲームやネットゲームは最終的に死ぬ運命にあるんですよね。逆にパッケージだと、同じシリーズでも全然違うものを出せるから死なない。たとえば同じ『FF』シリーズでも、『13』『14』では全然違うゲームじゃないですか。

 ソーシャルゲームやネットゲームって、リアルな数字がいつでも見れちゃうから、だんだん減っているとか飽きられているみたいなことも見えてしまう。つまり、「いつか死ぬよね」というのが見えているんですよ。
 だからパッケージという形で作り変えて、「永遠に残る形にしたい」と思っているんじゃないでしょうか。

 僕よりもずっと若いクリエイターに聞いた、心に残っている言葉があるんです。ソーシャルゲームやネットゲームが、ゲームを終えるときってエンディングが来ないじゃないですか。 だから、ソーシャルゲームやネットゲームのユーザーにとってのエンディングって、「なんだよこのクソゲー、やってられっか!」という気持ちか、「飽きた」「忘れた」という気持ちなんだと。

 パッケージゲームの場合は「面白くない」と投げるときもありますけど、エンディングまでやれば、「楽しかった」と思ってお別れするじゃないですか。ソーシャルゲームでお別れするときって、「関心が無くなった」がほとんどなんですよね。

ひろゆき氏:
 基本的にマイナスの感情しか残らないですよね。続編が出たとしても、「もう飽きたよ」ってなります。

──たしかに。ソーシャルゲームやネットゲームはその構造的に、必然的に飽きられて終わってしまいますね。それがIP化しにくい理由のひとつかもしれない。

 昔、4Gamerで読者レビュー機能を作ったとき、『ラグナロクオンライン』のレビューがたくさん来たんですよ。当時としてもまだかなり人気のゲームでユーザーもたくさん居たはずなんだけど、投稿が軒並み低評価で。「5年遊んだけどアップデートがクソだったので辞めました」「もう飽きました」とか。

 でも、「5年遊んだ」って普通に考えたらクソじゃないはずですよね。だって5年も遊び続けたんですから。だけど、そういう投稿を投げ捨てて去っていく。そういう事例、たしかにあったなと思い出しました。

ひろゆき氏:
 「楽しかった」じゃなくて「つまんなくなった」になってお別れしちゃうんですよね。

小沼氏:
 パッケージゲームの場合は、一度ちゃんと終えているんです。そういうものって積み重ねていくと大きなものになりますよね。

ひろゆき氏:
 クリアしたゲームって、いい思い出になりますもんね。クリアまで行っていると、面白いと思ってやっているから逆に消化不良なんですよ。

 面白いからもっと続けたい、けど終わっちゃった。その消化不良を残し続けて、それがプラスのブランドになっていくはずです。

──たしかにそうですね。もっと遊びたい、足りないという渇望や、次回作への「期待」の積み重ねが、IPやブランドというものを育てていくのかも。オンラインゲームだと、逆にそこが弱いからどんなに多くの人が遊んでいたとしても、IP化しづらいってことか。。

小沼氏:
 「ネットゲームは死ぬ運命」はかなり真実に近いと思います。


サービスの新陳代謝がサービスの寿命と直結する

小沼氏:
 そういえば、ひろゆきさんにお聞きしたいことがあるんです。以前インタビューか何かで「ネットサービス、コミュニティを伴うネットサービスは必ず寿命がある」という発言をされたと思うんですけど、その真意ってどういうことなんですか。

ひろゆき氏:
 Facebookとかでもよく言われますけど、「子供たちの遊びに親が来るとウザい問題」とか、「常連が幅を利かせ始めて新しい人たちが入りづらい問題」とかありますよね。

 「何か新しいものに飛びつく層」というのがいて、新しいものだからみんなで和気あいあいと楽しんで新しく場所を作っていると、「そんなに新しいものが好きじゃない面白くない奴」が集まってくるじゃないですか。あと、時間が経つにつれて古い人がベテラン風を吹かせて、新しい客が入らなくなったりということもある。

 これがネットサービスの寿命というものです。でも、ネットに限らず人類がそんなもんなんじゃないかって気がするんですよね。

 この新陳代謝をサイトの中でうまくできたサービスってあんまり無いんですよね。2ちゃんねるでも、元々「ロビー」という掲示板が流行ってて、その後「ラウンジ」にユーザーが移って、次は「ニュース速報」に移って……という感じで、同じサイトの中でユーザーを移動させたんです。

 YouTubeの場合は「このYouTuberは嫌いだな」と思ったら、次のYouTuberに行くので、そういう意味では新陳代謝が起きています。コミュニティの移動というよりは、単に面白い番組が新しくできたから、次はそっちに行くという感じで。

──2ちゃんねるのメインユーザー層がロビーからラウンジやニュース速報に移って、という民族移動って何で起きたんですか。

ひろゆき氏:
 それは意図的にやりました。ロビーで固定ハンドルネーム(コテハン)をつけた有名人が出てきて、それがウザいから新しくラウンジという板を作って、今度はラウンジでも有名なコテハンが出てきてというのを繰り返して。

 2ちゃんねるのトップには掲示板の一覧が並ぶんですけど、その一番上をラウンジにする時期があったり、ニュース速報にする時期があったりしました。初めて来た人は一番上をチェックするので、新人はそっちに移りやすい。そういう構造を作ったりして誘導していましたね。

──あんまり公で話していたところを見たことがない気がするんですけど、2ちゃんねるの黎明期って、確かひろゆきさん自身がスレ立てなど頑張ってやっていたんですよね。

ひろゆき氏:
 全部のスレッドにレスを付けるというのは昔やってました。

──コミュニティマネジメントみたいなことを、直接ひろゆきさんが手を下してやっていたということは、あんまり知られてないですよね。

ひろゆき氏:
 まあ、聞かれないと言わないですからね(笑)。

社長の代わりに、会社のことを本当に全力で考えるという仕事

──だいぶ話が脱線してしまいましたが、小沼さんの本についてひろゆきさんからほかに気になる点はありますか。

ひろゆき氏:
 あんまり本の話題に入ってない気がしますけど、大丈夫ですかね(笑)。

 宣伝の話で言うと、いわゆる「炎上マーケティング」みたいな、嘘ついたり誇張したりして話題にするプロモーション戦略もあるじゃないですか。小沼さんは、そういうのはやっぱりうまくいかないと思ってらっしゃるんですか。

小沼氏:
 時代によって違うと思いますが、少なくとも今は嘘をつくのは基本的にはどんな場合もマイナスだと思います。

 ゲームに限らず、今って商品の中身の評判が一瞬で広がるじゃないですか。だから嘘はつくべきじゃない。とくにTwitterなどのSNSがある程度広まった2015〜2016年以降は、もうほぼ嘘はつけなくなったと思います。

ひろゆき氏:
 小沼さん独自のノウハウがあるんだったらすごいと思うんですけど、「王道でやりましょう」となったら、小沼さんに頼まなくてもできるんじゃないの?ってなりませんか。

 当たり前のことをやっているだけで上手くいくのが小沼さんで、他の人がうまくいかないのはなんででしょうか。能力の違いでしょうか?

小沼氏:
 うーん。能力の問題というよりは、やっぱり本でも書いたとおり伝え方の順番ってあると思うんですよね。社内の連携を順序立てて組み立てられないと、どれだけ賢いプランであっても上手くいきませんよねっていう。

ひろゆき氏:
 社内連携を組み立てると言っても、その会社のいろんな部署の人に会って仲良くして、その会社の意思決定プロセスや社内の人間関係まで理解しないと難しくないですか。

 それを理解するのってかなり時間かかるし、ゲームの宣伝というよりも会社経営の根幹に関わるようなものじゃないですか。

小沼氏:
 でも、仕事って大体そんなもんじゃないですか(笑)。

ひろゆき氏:
 まあ、そうなんですよね(笑)。ウェブサービスでも、結局最後は人間関係で決まりますから。

小沼氏:
 会社には営業部とか宣伝部とかいろんな部署があるじゃないですか。その会社の機能をうまく連携させて、こちらの考えに沿って一緒に動いていただくと上手くいくんですよね。

ひろゆき氏:
 優しい言い方になってますけど、それって「全部俺の言った通り動かないと上手くいかないぞ」と言っているのと一緒じゃないですか?

小沼氏:
 まあ、否定はしないです。少なくとも、正しい方向に向けて全力で考えるようにしているし、ひとつのことを全力で考え続ける人って世の中にあんまりいないと思うんですよね。
 そういう意味で言えば、会社のことを本当に全力で考えている人って、それこそ社長くらいだと思うんですよ。

ひろゆき氏:
 たしかに。

小沼氏:
 一般的に言われいることですけど、宣伝のほうのマーケターは「社長の代理人」なんです。だから、本当は社長が自らガンガンやってくれた方が圧倒的にいいんです。
 でも、現実的にはそこまで時間を取るのは難しいから、代理人として社外社内問わずマーケターを雇うと思うんですよね。

──社長の代理人となると、向こうの会社の現場のスタッフに対して「社長の意思はこうだから、こうやりましょう」みたいに言うことになると思うんですけど、そういうのって現場とは対立しがちじゃないですか。そのへんはどうしているんでしょう。

小沼氏:
 難しいですよね。基本的には、プロデューサーなり社長なりを味方につけてやるんですけど、それを面白くないって思う方もいますからね。

 だから、「面白くない」と思われないようにしています。現場の人に理解していただくのが正攻法です。

──たとえば小沼さんが仕組んで形にして、でもそれを現場の手柄であるように演出するとか、そういうことってするんですか。

小沼氏:
 基本的に僕は雇われているわけですから、それは雇った人の手柄になるはずです。僕の手柄ではないですね。

ひろゆき氏:
 たとえば、それまでずっと自前でやっていたのに小沼さんを入れた途端にすごく成功したら、広報部の人が無能じゃねえかって言われて社内的な立場がどんどん悪くなるって場合もありますよね。
 そうなったら、そこの広報の人としてはむしろ小沼さんには失敗してくれた方がいいみたいな感じでプレッシャーがかかったりしないんですか。

小沼氏:
 そういう場合もあるとは思いますが、当たり前のですけど、そういう空気感になるとプロジェクト自体が失敗しますよね。

コンテンツの伸びしろは、”少年らしい人”の支持率に大きく左右される

──せっかくですから、最後に小沼さんにホンネをお聞きできればと思います。ぶっちゃけ、「こういう客層にこういうアプローチをしたら成功する」みたいな法則はあるんでしょうか。

小沼氏:
 これはちょっと記事には書かないでほしいんですけど……(笑)。実は、どういう人に届いたかによって、「そのコンテンツがその後伸びるかどうか」を見極める指標があるんです。なかでも重要なのは、生活の軸をコンテンツ側に置いている人。少年らしい感覚を持ち続けている人。男性か女性か、というとどちらかといえば男性。一言で言うと……。

ひろゆき:
 童貞ですかね。
 
一同:
 (爆笑)

ひろゆき氏:
 そういう人って爆発力ありますよね。

小沼氏:
 コンテンツの伸びしろや寿命は、そのコンテンツを支持しているそういう”少年らしい人”の割合に大きく左右されます。”童貞”力は超大事です。

ひろゆき氏:
 分かります。

──ネットサービスにも通ずるものがありますか?

ひろゆき氏:
 かなり通じますよ。YouTuberでもそうで、モテるとやる気を失くす人が多いんですよね(笑)。ちゃんと儲かってやめる人もいるけど、モテてやめる人のほうが多いですね。

 どうでもいいことにすごい熱意やエネルギーをかけられるのって、「なにか報われていない」みたいなモチベーションが必要なんですよ。
 たとえば、何年か前にフジテレビ反対デモがあったじゃないですか。フジテレビの周りを何万人も囲うほど人が集まっていたらしいんですけど、最終的にはうやむやになってしまった。その理由が「主催者に彼女ができたから」というものだったと。それとか、すごく分かりやすいですよね。

小沼氏:
 作り手にとっても、伝える側にとっても、大事なことだと思っています。

ひろゆき氏:
 そういう少年らしいセンスって、年を取るにつれて失われるじゃないですか。僕の知り合いで優秀なライターがいるんですけど、その人はいい意味ですごく頭が悪い(笑)。いつも小学校5年生のセンスで、ウンコとかそういうのにすぐ引っかかるんですよ。

 でも、記事でそういう感じのセンスを入れるとバズるんですよね。そこら辺のセンスを失わないってのはすごく重要なんですけど、年を取って物を知るたびにどんどん失われていっく。
 小沼さんはそれを失わない努力をしているのか、あるいは小沼さんが小5のまま成長してないのか、どっちなのかなと思いました。

小沼氏:
 両方かもしれないですね。逆に言うと、自分のセンスは信じていないんですよ。ただ、それが少年らしさなのかどうかはわからないですけど、人の心に響く何かみたいな感覚は失わないようにはしています。だから、たまには家にこもってゲームに没頭したりしていますね。

ひろゆき氏:
 たとえば、もうこの歳でパンチラとか見ても、もう何も魅力を感じないじゃないですか。キャラのパンツが見えているからって、もはやそれにどれほどの価値があるかも分からない。でも小5はそこに食いつくわけじゃないですか。

 受け取り方が変質しているので、得られる情報自体も変わっちゃっていると思うんですよね。小沼さんは今でもパンチラで喜べるんですか。

──ひろゆきさんはその感覚を持てているんですか。

ひろゆき氏:
 持てていないですね。

──昔はあったんですか。

ひろゆき氏:
 僕は自分のセンスが特殊だと自覚しているので、「僕のセンスで進めると失敗する」と公言してやっています。たとえば、昔2ちゃんねるでフライトシミュレーターの掲示板を作ったんですけど、面白いと思っていたのは僕くらいで。まあ見事に流行らなかったですね(笑)。

──僕は居たかもしれないです(笑)。

ひろゆき氏:
 「僕が面白いと思うものは世間とずれる」って逆に理解しているんで、そこは深く追わないというふうにしています(笑)。

小沼氏:
 僕もゲームの趣味自体はよくないので、自分の趣味は反映させないです。

ひろゆき氏:
 どういう系なんですか。

小沼氏:
 以前も言ったかもしれないですけど、未だに『シヴィライゼーション4』とかやってます。

──自分の感覚を当てにしないのに企画を当てるとか、物事をうまく行かせるってどうしたらできるのでしょうか。

小沼氏:
 全部理詰めですよ。

──それはどうやって鍛えられるんでしょう。

ひろゆき氏:
 いわゆる一発屋と、複数当てている人の違いって明確にあるんです。一発屋は自分のセンスがたまたま世の中と合致したタイミングで売れるんですけど、一回売れたあとはみんなに飽きられているんで、同じことを続けても全く売れないです。

 複数当てている人って、「自分の感覚じゃないもの」をいろいろと試せる人なんですよね。試行錯誤した結果、打率の高いものを見つけて、打率を上げる方法をちょっとずつ調整して、確実に当てていくという作業を行って。
 一通り当て終わったら、ホームラン級のヒットに活かせそうなノウハウを蓄積して、また次のコンテンツを育てる、というサイクルの繰り返しなんじゃないですか。

 多分、小沼さんは他人の金でいっぱい失敗することで、そういうセンスを磨いているんじゃないでしょうか。

小沼氏:
 そういう意味で言うと、プロモーションの仕事でもかなり失敗を経験できてますね。これまでどれだけお金を費やしたか分からないですけど、たぶん累計で100億円ぐらいは使ったんじゃないかと思います。100億円も使うって、自分のお金じゃまず無理だし、なかなかできないと思うんですよね。成功もあれば、失敗もありました。

 だから、成功の実績はもちろん大事ですけど、失敗の実績もかなり大事だと思います。いろいろ実験して、いっぱい失敗できるから、反省を活かせて次第に失敗していかなくなるんじゃないでしょうか。

ひろゆき氏:
 「ここにCM打ったら失敗するんだ」って、そんなこと自分のお金ではできないですからね。

「自分が踏み込む領域」と「踏み込まないで支える領域」を見極める

──小沼さんは単純に「ゲームを売る」ということよりも、そのゲームを作っているプロデューサーやディレクターに思い入れがあるのではないでしょうか。「彼らをなんとか助けたい」という思いがあって、その手段として自分のマーケティング能力を使っている。
 それが仕事のモチベーションに繋がっているから、自分が表に出ようとは思わないんですかね。

小沼氏:
 そうですね、そっちには関心がないです。

ひろゆき氏:
 たとえば若くて活きのいいクリエイターが、「ゲームの売り方全然わかんないけど、月給20万円くれればずっとゲーム続けられるんで!」と言ってたら、小沼さん自身がパブリッシングをしたりはしないんですか。そういうのもクリエイターを支える仕事になるじゃないですか。

小沼氏:
 それって宣伝じゃなくてプロデュースになるんじゃないかと思います。そのふたつは全然違う職能だと思っていて、後者には興味がないんですよね。

ひろゆき氏:
 社長の代理人とかプロデューサーの代理人だと言っておきながら、興味はないんですね。

──宣伝とプロデュースが切り離されるのがよくわからないですね。たとえば、あるゲームのプロデューサーやディレクターを支えたいと思ったとき、そこで求められる業務って「どう売るか」とか「売るにあたって、どう商品設計するか」みたいなことですよね。
 アトラスでの小沼さんの仕事ぶりを聞いていると、企画の段階からの相談に乗ったりしているじゃないですか。

小沼氏:
 相談に乗りはします。でも製品や企画の内容に関して、自分の意見は言わないようにしています。

ひろゆき氏:
 それを言わないようにしてるのは、もうルールとして自分で決めてるってことですか。でも実際は、思わず口に出ちゃったりするじゃないですか。

小沼氏:
 多少はありますよ。なるべる抑えるようにしていますが、どうしてもと言われた場合は「あくまで僕の意見です」と言ってから口に出すようにしています。

 ゲームってやっぱり、作家性が問われる作品だと思っているので、「マーケティング的にはこれが正しいのだ」というふうに理解されてしまうと、製品が歪むんですよね

 だから、マーケティング的にどうであれ、作り手自身が「俺がやりたいんだ」という気持ちが絶対に必要だと思っています。それが欠けたときに、なんか商品としての魅力が損なわれることが多くて。

 『東方Project』のZUNさんが「INDIE Live Expo」に出たとき、「ZUNさんにとってゲーム作りって何ですか」と聞いたことがあるんです。
 そのときZUNさんは、「自分が面白いと思っていることをやり続けることだよ」と言ったあとに「いや違う」と言い直して、「そのゲームがクソゲーでも面白くなくてもいいから、自分が面白ければいいんだよ」と言ったんです。

 すごく良い言葉だなあと思って。僕自身はゲームを作らないですけど、僕のゲーム作っている人に対する気持ちがそれに近くて、結局はゲームを作るその人が楽しければいいんじゃないかと思っています。それを支えたいんですよね。

──小沼さんは、イメージエポック時代にプロデューサーとして挫折した経験があるって書かれていたじゃないですか。その挫折があった上で、自分が踏み込む領域と踏み込まないで支える領域をきっぱり切り分けたと思うんですけど、そのへんの経緯を具体的にお聞きしたいです。

小沼氏:
 なんだかんだ言って中小企業でしたから、プロデュースができる人間がほとんどいなかったんですよ。だから発言力があって地位があるような人が、結果としてプロデュースを担うようになったんです。

 その一環として、僕もそれまでは「ゲームを作ってみたい」って気持ちがあったし、誰も反対しなかったからやってみたんですよ。でも実際にやってみたら、自分が思っていたのとは全然違ったんですよね。

 ゲームのプロデュースというものは地道な作業の積み重ねで、もっと言うとプロジェクトの成功に向けて、自分の全人格を注ぎ込まないとできないような仕事だったんです。
 自分は、ゲームの宣伝の仕事ではそれができたんですけど、開発という仕事でそれをやったときに「面白くない」って思っちゃったんですよね。だから、まあうまくいきませんでした。

ひろゆき氏:
 小沼さんって、自分の才能に対して自信のある部分と、本当に自信のない部分がけっこう極端に分かれてますよね。一度成功した人って謎の万能感を持って、不得手な分野に突っ込んで大失敗したりするじゃないですか。
 小沼さんがそれをしてないのって、やっぱり若いころの失敗のおかげだったりするんですか。

小沼氏:
 そうですね。イメージエポックの件もそうですし、若いころの失敗は「不得意な分野に挑戦するのはやめよう」と思ったきっかけでもあります。

──そのあたりの、どこに踏み込んで、逆にどこに踏み込まないかの考え方は、作家と編集者の関係にも似ていますね。

小沼氏:
 そうかもしれませんね。やっぱり、僕自身が作り手ではない以上は、自分はあくまでサポーターなんですよ。だから、なんで主役を張ろうと思わないの!? と不思議に思う方もいるのかもしれませんけど、僕にとってはそれが一番心地よいし、やりたいことなんです。

 その意味では、ZUNさんが言う「自分が面白ければいい」を、僕もただ追求しているだけなのかもしれませんね。ただ、僕の場合はそれが、「ゲームを作る人への奉仕」だったというだけのことなのかなと思います。(了)


 小沼氏の著書の宣伝が目的だったはずの今回の対談だが、本題を飛び越えてさまざまな興味深い話題が語られた。ネットやSNSが発達した現代においても、人間が人間である限り、「情報の伝え方」の本質は太古の時代から変わっていない。小沼氏・ひろゆき氏ともその認識を同じくしていたことが印象的であった。

 ゲームのプロモーションという「コンテンツの最後」を担当する小沼氏と、ウェブサービスの立ち上げという「コンテンツの最初」を担当するひろゆき氏。両者は分野も役割も全く異なるように見えるが、面白いのは「自分のセンスを当てにしていないのに成功している」という奇妙な共通点だ。
 裏方として、あるいは表方として、その道のプロがどのようにコンテンツを仕掛け、成功に導いているのか。今回の対談で、その手練の一部を垣間見ることができたはずだ。

 その思考の道筋をより詳しく知りたい方は、ぜひ小沼氏の著書を手に取ってみてはいかがだろうか。

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