『VRChat』でアバター即売会を開催したら“違法アバター”が減少した話──バーチャル世界を胸を張って生きていける場所にするためにVket主催者がしたこととは

 VRSNS『VRChat』内で開催される世界最大規模のVRイベント「バーチャルマーケット」は今年の開催で5回目を迎える。

 2018年に開催された第1回では参加サークル80ほどの規模であったが、前回の第4回の参加サークルは約1100にも及び、今回は更なる進化を遂げて様々なブースが出展。「バーチャルマーケット」では様々な3Dアバターやモデルの販売が行われており、回を重ねるごとにその経済圏は規模を大きくし存在感を増している。

 驚くべきことに、2020年12月19日〜2021年月1月10日まで開催される『バーチャルマーケット5』では、前回を上回る個人出展スペース、70社を超える出展企業になっており、さらに人気IPのキャラクターを用いた公式アバターなどの3Dモデルが100体以上販売されることになっている。

 既に『VRChat』では、自分だけのアバターを作ったり、既存のアバターをカスタマイズしたりして、SNSアカウントのアイコンのように、アバターで自分を表現し、仮想空間上で活動を行う“アバター文化”が根付いている。これまでアバターの多くは個人クリエイターの作品がほとんどだったが、そこに人気IPのアバターが大量に加わるのだから、アバター文化は一気に加速するだろう。近い将来、1人1アバター、いや1人複数アバターが当たり前になる時代が来るかもしれない。
 といったところで、今回はVR法人HIKKY所属で「バーチャルマーケット」の主催者である動く城のフィオ氏と、副主催者である水菜氏に話を伺い、「バーチャルマーケット」が開催されるまでの歴史や、今回開催される第5回の見どころなどを整理していく。

 更には「バーチャルマーケット」が『VRChat』で発生していた権利問題といかに向き合い解決をしたか。そこで得られた達成を、どのように海外のユーザーにも伝えていくのかまでの話も伺うことができ非常に興味深いインタビューとなった。

画像左:水菜氏 画像右:フィオ氏

聞き手/クリモトコウダイ
文/tnhr


1回目の「バーチャルマーケット」はある意味伝説的なイベントであった。

──今回の「バーチャルマーケット5」は今まで以上の規模になっていると思うのですが、本題に入る前に、まずは「バーチャルマーケット」の始まりの部分から振り返っていければと思います。1番最初の「バーチャルマーケット」は2018年でしたよね。

フィオ氏:
 2018年8月26日に開催したのが一番最初で、それが全てのきっかけですね。いまでこそ「バーチャルマーケット5」という言い方をしていますが、当時は続きをやるかどうか分からなかったので、ただ単に「バーチャルマーケット」としか言っていませんでした。

──いまでこそ「バーチャルマーケット」は仮想世界を代表する一大イベントですが、1番最初の「バーチャルマーケット」を始める時は、どこがスタート地点だったのでしょうか。

フィオ氏:
 まず1つは、私とVRとの出会いが結構関わっていまして。私は元々普通の会社で働いて会社経営などをやっていたのですが、その後に鬱になってしまったんです。しばらく外に出られなくなってしまった上、クリエイティブが好きだったのに全部できなくなるという経験をしてしまったんですよね。人と関わるのも凄く怖くなっちゃったんです。

 そんな中、2017年の末にVtuberやVRのブームが来て、VRの価格が下がって一般の方でも手に取れるようになって。その話を聞いたときに、VtuberとかVRとかのバーチャルな人格を通してだったら、生きていける可能性があるのかもしれないなと思って、バーチャル空間に来たのがはじめのきっかけだったんです。

 現実社会だったら落伍者みたいな状況になっている中で、バーチャル空間での生活を続けていました。そしたら私のやる企画が面白いとか、応援しているとか言ってくれて、バーチャル空間で生きることをみんな認めてくれたんです。

 ですので、そのままバーチャル空間上で生きていけたらいいなと思ったのが、「バーチャルマーケット」をやろうと思ったきっかけの1つで、それは私の夢でもありました。バーチャル空間を胸を張れる場所でありたかったっていうことが凄く大きかったんですよね。

──バーチャル空間に生きる可能性を見出したということですね。

フィオ氏:
 そして2つ目の理由ですが、それは『VRChat』などで利用する個人用の3Dアバターという概念そのものが、それまで存在しなかったということです。

 3Dモデルと言えば、ゲームで使われていたりMMDで使われていたりとか、その様なモデルは存在していたんですけど、アバターとして使う用の3Dモデルは存在していなかったんです。そうなると、ゲームから引っこ抜いたリッピングモデルをアップロードして使用してしまうケースが多くなってしまうんです。

 MMDモデルも、あれはMMD用に作られていてクローズドな二次創作で使われているじゃないですか。けど、『VRChat』ではパブリックにアップロードされたアバターは商用利用してもいいという規約があるため、MMDモデルが作者の想定外の利用方法で使われてしまうんです。

 これはMMDの作者としても非常に困ることなんですね。MMDのモデラーは、そのつもりでモデルを作ったわけではないので、「MMD界隈」と「VRChat界隈」でよく論争の種になっていました。これは、界隈がどうというよりかは、ちゃんとしたモデルを使っていない人が悪いんですけど。

──たしかあの当時の『VRChat』はそんな感じでしたね。

フィオ氏:
 そんな状況の中、2018年6月くらいからアバター用に作られた3Dモデルが販売され始めたんです。それがムーブメントになって、これはいい流れだと思ったんです。

 リッピングモデルを使ってしまう人っていうのは、ちゃんとしたアバター用のモデルがないから使ってしまっているだけで、きちんとしたアバターがどこに売っていて、どうやって使えばよいのかわかれば良いんです。要は、使えるアバターがこの世にない、もしくは存在を知らないという状態が一番問題だと思ったんです。

 この販売アバターという概念、そして販売アバターという市場のムーブメントを最大化するためには何ができるかなって思ったときに、リアルでやってるコミケなどの同人誌即売会にヒントを受けて、アバターに出会える場所、つまり3Dアバターのマーケットを作ってしまえば、多くのユーザーさんはそれを喜んで使うだろうっていう考えになったんです。

 そしてすぐに「アバターを販売できる展示会のバーチャルマーケットっていうのをやろうと思うんだけど、みんなはどう思う?」っていう話をTwitterでしたら「めっちゃいいね!」みたいに良い感じの反応があったので、早速次の日に「8月26日にやります!」って発表しました(笑)。

──スピード感が凄い(笑)。

フィオ氏:
 結果、地獄観ましたけどね(笑)。そういう感じで始めました。そこから「バーチャルマーケット」に向けて新しくアバターを販売するモデラーさんがたくさん出てきました。おかげで、よく分からずに違法のアバターを使っていた人が、自分でモデルを購入してアップロードして使うもんなんだという権利意識みたいなものが生まれていったんじゃないかなと。

 このように、権利意識への問題意識みたいなところからも「バーチャルマーケット」は始まっているんです。もちろん「楽しそうだから」っていう所が一番大きかったんですけども(笑)。

──その時は、ネットで声をかけて有志で集まったんでしょうか?

フィオ氏:
 そうですね。私は当時、VR空間上で番組をやるという企画を色々やっていて、その時からずっと #相棒 としてやってくれたのが、今回のインタビューにも同席している水菜ちゃんです。他には私と同じVtuberで、モスコミュールおじさんという方が、モデルを作るのが凄く上手だったので、「一緒にバーチャルマーケットをやろう!」って声をかけて、楽しそうじゃんと言って3人で集まりました。

水菜氏:
 ちょっと補足すると、最初Twitterからこういうのやったほうが良いんじゃねって話が色々と上がったんです。そこで、私は元々即売会の主催をやったことがあったってこともあって、そういうノウハウを使っていくこととなり、フィオさんはイベント企画としての立場で、モスコミュールさんがワールドを制作するという編成になりました。

──めちゃくちゃいい組み合わせですね。

水菜氏:
 そうだと思います(笑)。

フィオ氏:
 けど、3人とも最初はUnityの知識が無かったんですよね。やりたいっていう気持ちはあるけどUnityが全然わからないという状態で。『VRChat』のワールドはUnityで作られているのに(笑)。

 だから色々な所から詳しい人が集まって助けてくれて、なんとか開催にこぎつけたって感じですね。

──そう聞くと1回目は中々壮絶ですね(笑)。

フィオ氏:
 1回目は中々伝説的ですね。そもそも1か月半で完成したのも奇跡ですし、80人もクリエイターさんが短期間で集まったんです。今までは、アバター向けの3Dモデルなんて全然無かったのに、新しいクリエイティブのジャンルが一気に生まれたというのもまた奇跡的です。

 けど、Vket1の会場のクオリティは酷かったんですよ…。描画負荷が酷くて、人によっては入れないという状況でした(苦笑)。

水菜氏:
 ワールドの造形は凄く良かったんですけど、会場に入ってもとんでもない負荷がかかってカクカクし、最悪『VRChat』自体が落ちちゃったりして。

フィオ氏:
 ワールドが崩壊して、誰かが他のアバターに触ると全員強制的に同じアバターになるとかいうバグが発生しました。今それをやったら許されないですよね。黎明期ならではのエピソードです。

たくさんの”きっかけ”を作る「バーチャルマーケット」

──「Vket1」が伝説的なイベントとなり、そこから今回で5回目の開催となりますが、やはり「Vket1」の反響が大きく、すぐに第2弾をやろうとなったんでしょうか?

フィオ氏:
 はい、本当に喜んでくださる方がたくさんいました。「バーチャルマーケット」のおかげでアバターが完成したよっていう話だったり、「たくさん売れたよ」とか、「バーチャルマーケットをやるっていうことを聞いてVRをはじめました」っていう声だったり、「好きなアバターに出会いました」という話も聞けて。

 あと、違反アバターを使う人が凄く減ったっていうのは実感としてあったので、当初の目標はある程度は達成できました。なので、改めて「バーチャルマーケットって何だっけ?」っていう話をして、多分このイベントは”きっかけ”を提供するイベントなんだっていう結論に至って、次に向けてスタートしました。

 3Dモデルの展示会というイベントは今までは無かったので、「バーチャルマーケット」が年2回あることによって様々な”きっかけ”が発生します。例えば、クリエイターにとっては締め切りが発生したりという具合です。私も含め、クリエイターという生き物は、締め切りがあったら作品ができるっていう生態なんです(笑)。さらに、世界中から人が来るので世界中の方々に、自分の作品をみてもらえるきっかけにもなります。

 多くのユーザーにとっては、アバターを探す作業というものは大変で、アバター用のプラットホームが無いので、Twitterの情報を頑張って集めるか、『VRChat』とかで「君のアバターめっちゃいいけど誰が作ったの?」って聞くという、原始的な感じのアバターとの出会いしかないんです。だけど「バーチャルマーケット」に行けば、その時の最新のアバターとたくさん出会える。もちろん武器や小物や服などもたくさんの種類があります。

──クリエイターにとって締め切りという”きっかけ”は、やはり大事なのでしょうか。

フィオ氏:
 めっちゃ大事ですよ(笑)。締め切りがないとズルズルいっちゃうんです。

水菜氏:
 クリエイターにとって締め切りは本当に大事ですね(笑)。これがないと、作れない人がほとんどじゃないですか?

 私は元々同人誌を書いていたんですけど、最近のご時世でイベントがないと作品を出す機会が無く、印刷所の締め切りも無いので……。周りの仲間もそういう人が多いです。3Dもクリエイティブに関しては全部同じだと思います。

 ただ漠然と作るってなると完成しないと思うんですよ。これは私の主観ですけど、作品って研磨していって、どこかで妥協するじゃないですか。けど締め切りがないと永遠と妥協のラインが見えてこないんですよ。

フィオ氏:
 あと、友達と共通の締め切りを一緒に頑張ることができるのは良いですよね。『VRChat』って元々コミュニケーションのゲームなので、自分と同じ境遇の出展者で集まって作業部屋で作業することもあるんですよ。みんなで「進捗やべえよ」って言いながら(笑)。

──出展の準備までもがコミュニケーションになるのはめちゃくちゃ面白いですね(笑)。

フィオ氏:
 あと「バーチャルマーケット2」からは正式に企業のスポンサーが付くようになったんですが、企業さんにとっても”きっかけ”になるんだなと、「Vket2」が終わった後に思いました。

 世間ではVRが毎年来るぞと言われ、毎年VR元年みたいなことを言われて、実際いつ来るのかは分からないし、企業として何をやればいいのか分からないという状況が多いと思います。

 なんとなくVRでアプリ作ってみても、ダウンロード数は大していかないので、VRに興味はあるけど何をすればいいかわからないという企業側の悩みがあるんですよね。そんな中で「バーチャルマーケット」は、お試しする場を与えることができたんです。

 何10万人という人が「バーチャルマーケット」って場所に訪れるんですけど、そこで自社の商品をアピールしたりとか、最近だとゲーム会社が出展する時に、ゲーム用に作られたモデルをアバター用にセットアップし直して、それを販売するっていう新しいマネタイズモデルを試すということもしています。

 このように、色々な方面に対して”きっかけ”を与えるのが「バーチャルマーケット」の役割なんだって話をよくしています。バーチャルマーケットの「機能」は”きっかけ”であり、それを何度も繰り返していくことによって、バーチャル世界が豊かになっていくことが「目的」なんだよ、という話をしています。

──バーチャル世界って最初は物がないですもんね。

フィオ氏:
 そうなんです。今は「バーチャルマーケット」が開催されるたびに、1000ちょっとのサークルが参加して1500から2000のアイテムが増えています。開催するごとにクリエイターさんが増えているので、バーチャル空間が豊かになっていく。更にこれをきっかけにしてバーチャル空間に入っていく人が増えてきたんですよ。

 「バーチャルマーケット」が大きくなって、スタッフも増えて、力を貸してくれるクリエイターさんと一緒になって経済を回して市場創造していくことができるっていう下地が段々と整いつつあると思います。

企業アバターにとって、新しいマネタイズを得る以上に生まれるメリット

──企業出店が増えてきて、企業のアバターが販売されるようになったと思うんですけど、どのあたりから本格的に動いていったのでしょうか。

フィオ氏:
 本格的に動いたのは今年のGWにやった「Vket4」ですね。その時にスクウェア・エニックスさんが『NieR:Automata』の2Bと9Sのモデルを販売されたんです。クオリティも高く、非常に好評でした。

 そこから結構色々な企業さんがアバターを販売し始めて、最近だとプラモのコトブキヤさんがアバターを販売するっていうことを予告しています。

──アバター文化っていう視点で言うと、企業のIPのモデルが売られるって大きなターニングポイントだと思っています。企業側からするとVRの空間で自身のアバターを売って、ユーザーが買ったら自由に使ってい良いとするって怖いと思うんですが、企業さんからはどういう反応があったんでしょうか。

フィオ氏:
 最初は不安ですっていう声が凄く多かったです。我々も危険性があるっていうことはきちんと伝えなきゃいけないので、そこは伝えています。

 『VRChat』に限らず、権利意識が低いと言うか、クリエイティブへの敬意が無い人はルールを守らずにモデルを使っちゃうんですよ。
 例えば『NieR:Automata』でも2Bのモデルをゲームから違法な手段で取り出して、アバターとしてアップロードしている人も居たんです。日本はやたらと権利に厳しいイメージがあるんですけど、フェアユースという考えが浸透している国だと、別にアップデートすることによってスクエニに損害が無いじゃんという考えでアップロードしてしまうんです。こればかりは文化や考え方、法律の違いなので、それ自体が良い悪いというのは一概には言い切れないです。

 ただ、そういう事例はあるんですよって話をした上で、逆にアバターとして正式に販売したらその瞬間にフェアユースという言い訳は通じなくなるというメリットも提示しています。公式が販売したら、その模造品を販売することは権利違反なおかつアバターを販売するという利益に対しても相反している海賊版になってしまう訳です。だからある意味、これは新しいマネタイズ手段でもあり、IPを守る手段でもあるという説明をしています。

──なるほど、マネタイズの他にもメリットがあるんですね。今回の「バーチャルマーケット5」ではそのモデル数がかなり多いとお伺いしましたが…

フィオ氏:
 そうですね(笑)。企業さん発のアバターが大体100体…(笑)。

──それって凄まじい話ですよね(笑)。

フィオ氏:
 「Vket4」の時は10体弱位なんです。3社くらいが出品しました。今回それが全部合わせると100体くらいに。

──それってなにがあったんですか。

フィオ氏:
 なんなんですかね、カンブリア爆発みたいな(笑)。

水菜氏:
 スクエニさんが先陣を切ったのが大きい気がしますよね。

フィオ氏:
 実際に誰かがやってないと出品するのは怖いですからね。

水菜氏:
 あとは可能性感じてくれたんだなっていうのもあると思います。「Vket4」で企業がアバターを出したのが良いターニングポイントになったんじゃないかなと。

 ちょっと極端すぎませんか!?って思いましたが、これからも増えていくんじゃないかって気はします。

──アバター文化的に言うと、個人で作ったのもあるし企業のIPもあるしって両方あるとすごく良いですよね。

フィオ氏:
 そうですね。アマチュアだけの世界でも全然楽しいんですけど、そこに企業のアバターが入ってくると刺激になると思うんですよね。ゲーム用の超絶クオリティーのモデルがアバターとしてリメイクされて販売される場合もあるんですよ。けど、意外にそのようなモデルは元々はアバター用途で使われることを想定していないので、使い勝手の面ではアマチュアのアバター制作者のモデルが使いやすい、という事実に逆に気が付く場合もあります。

 プロの技も光るし、アマチュアの現場叩き上げの技も光るという、互いに良い循環になっていくんじゃないかなと考えています。

水菜氏:
 もうひとつあるのが、アマチュアの市場ってクリエイターさんが基本的に活動していくっていう形になっているのですが、企業はマーケティング担当や営業担当が居たりと組織で活動していると思います。そういう、売り出す能力に磨きがかかっていて、ゲーム会社等のノウハウを持った組織がアバターを作ったらすごいんだろうなとも思います。前例がまだあまりないので、プロもアマチュアもお互いに良い刺激になればいいと願っています。

──今回の「Vket5」は今後も考えると見どころたくさんですね。

フィオ氏:
 今回は凄くエポックメイキングな回になるとおもいますね。

なぜ「バーチャルマーケット」を世界に発信するのか

──ここ見て欲しいっていう注目点があったらお聞きしたいです。

フィオ氏:
 「バーチャルマーケット」には毎回テーマがあって、今回は「ワールドビヨンド」っていうテーマなんです。前回の「Vket4」は「パラリアルワールド」で、東京をぎゅっと縮めたワールドをパラリアルトーキョーっていう形でエントランスに作ったんです。

 それでついに今回の「ワールドビヨンド」で世界に飛び出しちゃったんですよ。「ワールドビヨンド」っていうワールドがあるんですけど、そこは世界各国のオブジェクト、例えば自由の女神、ピサの斜塔、富士山、エアーズロックなど、世界中がぎゅっと凝縮したワールドになっております。

 今回「ワールドビヨンド」ということなので、世界に対してマーケティング活動をしていて、今回はじめて、チーム内に英語話者で構成されたグローバルチームを作りました。なので出展者募集の段階で、海外を意識していました。

 「Vket4」までは日本のイベントって感じだったんですけど、今回から徐々に世界に広げていきたいですね。そのために出展の応募、申し込みの時点で、英語話者のクリエイターさんに声をかけています。『VRChat』のユーザーは海外の方が圧倒的に多いんですけど「バーチャルマーケット」には日本語の表記しかないというのが問題でしたので。もちろん、英語だけじゃなくて、韓国語や中国語、スペイン語…世界中に広げていきたいです。

──何か文化の違いなどで苦労することはありますか。

フィオ氏:
 海外はコミッション文化という、直接クリエイターに報酬を渡して一点物を作ってもらうという取引形態が主体ですね。日本でよく見られる、自分の好きなものを作ってある程度安い金額で売る、そしてそれがそれなりの数売れる、っていう文化や市場がまだあまりなくて。

 なので、こういう販売の仕方があるんだよっていうことを海外の方に伝えていきたいです。あと、国外のクリエイターさんが作るアバターは作風が全然違くて面白いですよ。そういう意味でも多様性が生まれてきたと思います。

 世界を表した「ワールドビヨンド」っていうワールドがありますっていう点と、出展者来場者含めて世界を意識した、「世界のバーチャルマーケット」になっていく」というのを意識しているという点。見どころはそのあたりですね。

──出展の比率はどれくらいですか。

フィオ氏:
 まだまだ少なくて、今回は海外比率が10%くらいですね。ほぼゼロだった所から海外の出店者さんが増えたのはグローバルチームのメンバーが、頑張ってくれてクリエイターさんとのコネクションつくりや出展申込を集めてくれたからです。

──水菜さんからはありますか。

水菜氏:
 個人としてのオススメは「Vket1」からずっと出ている人のブースですね。そういう人たちって、歴戦の戦士みたいな感じで知識が凄くて、毎回こういう形で出してきたか!っていう驚きにあふれているので見どころとして大きかったりします。そういうビックリするブースを見つけて欲しいです。もちろん、初参加の人にもそういう方が居るので、一概には言えないのですが。

 あと、自分はこういうの好きだったんだなってことが新しく分かったりするブースもあると思うので、そういったものを見つけてみて欲しいなと思います。

フィオ氏:
 分かります。もともと自分の趣味じゃないようなアバターとかモデルとかが、ふらっと立ち寄ったスペースで刺さっちゃって、なんか新しい趣味に目覚めちゃうみたいなものもありますよね。

水菜氏:
 インターネットって自分の好きなものを見つけていくことに特化してきているので、自分の好きなものが偏りがちになってしまいます。例えばTwitterのフォローフォロワーとかの関係とかで。

フィオ氏:
 エコーチェンバー現象みたいな?

水菜氏:
 そうです。類友とも言いますかね。そういった枠から外れていくことって楽しいじゃないですか。だから友達同士でこのブースヤバかったよって。お互いに紹介し合って欲しいですね。

フィオ氏:
 あと、これは私の”思い”の部分なので、あんまり表立って言わないし、角がたっちゃうので言い方を気をつけなきゃいけないと思っている部分なんですけど、先ほど言ったフェアユースという考えが浸透している国のユーザーに向けて、権利意識をもっと高めていって、クリエイティブの価値とクリエイターへの敬意や感謝みたいなモノをもっと高めていけたら良いなと思っています。ただ、日本で権利意識をガラパゴス的に高めていても、アバターの説明文や利用規約が日本語でしか書かれていなかったら日本語が読めない人にとっては規約もなにも理解できないじゃないですか。

 良かれと思って、アップロードしちゃう場合もあると思うんですよね。先にお話したように「Vket1」あたりをきっかけにして、日本のユーザーのアバター事情は大きく変わったんです。それと同じことを世界でも再現したいなと。

 色々な世界中のプレイヤーが参入することによって、日本のアバター文化や、クリエイターさんの権利を大切にしながらユーザーさんの個性を大切にするっていう気持ちを、日本から世界に向けて発信していけないかと思っているんですよね。

 こういう思いがあって「バーチャルマーケット」は世界展開しています。つまり私の本当の”思い”は、世界のアバター文化の正常化・市場化なんです。バーチャル世界を、胸を張って生きていける場所にしたい。そうなっていく為には、アングラでダーティでギークにとって居心地が良いだけの世界じゃダメだから。

現実に”ままならなさ”を感じたらVRに来よう

──この世にはまだ潜在的なVRユーザーが居ると思うのですが、どのような人に向けて「バーチャルマーケット」参加して欲しいか、VRをはじめて欲しいかを聞かせてください。

フィオ氏:
 そうですね、現実に”ままならなさ”を感じる瞬間ってあるじゃないですか、そういうのを感じた時にVRの世界に来て欲しいなと思っています。

 人ってどうしても視野が狭い生き物だから、今現在自分の居るところが全てだと感じてしまって、それで悩んで苦しんだりとか心を病んでしまったりとか、実際に私も鬱になってしまったりした。けど、バーチャルな世界には、もう1個の現実世界があるんですよね。

 これって凄く伝わりにくくて、体験して貰えば分かるんですけど、そこには現実の生活空間と同じようにバーチャル上に生活空間が広がっていて、そこには人がたくさんいて、人と人との関わりがあって、物が作られて、取引が行われているんです。

 どんどんバーチャル空間上で生きている人が増えていて、私なんかはもう、現実の体や本名を知っている人の方が少ないんじゃないかな。他にも、モデラーとして、イベンターとして、VR開発者としてバーチャル空間上で生計を立てる方も居て、新しい経済圏や生活圏が生まれ始めているんです。この流れはきっと止まらなくて、どんどん大きくなっていくと思うんです。

 とはいえ。ご飯食べなきゃ人間は死んでしまうので、現実の世界を完全に捨てきるということはできません。現実とは別に、ーチャル空間には無数に現実があるということが重要なんです。

 例えば私でしたら、フィオとして活動するのがしんどくなったら、それを辞めることができる。アバターを変えてボイスチェンジャーを入れればアカウントを変えたら全然別の人として活動できるんです。

 物理世界で1本で生活する人、私みたいにほとんどバーチャルの世界で生活する人、これらを行ったり来たりしながら生きている人、バーチャルの世界に複数の人格や職業を持っている人も居るかもしれません。

──選択肢が複数あるだけで救われることもありますからね。

フィオ氏:
 私は映画『レディ・プレイヤー1』に好きな言葉があるんです。映画の冒頭あたりで出てくるんですけど「人々は何かをするためにオアシスに来るんじゃなくて、何かになるためにオアシスに来るんだ」という言葉があるんです。バーチャル空間はまさにそうで、自分が好きな存在になれるんです。

 現実世界で生まれもったものってあるじゃないですか、名前だったり年齢だったり性別だったり出身地だったり身体だったり。そういうものはバーチャル空間では関係ないんです。実際に「バーチャルマーケット」のスタッフにも性別や年齢が分からない人がたくさんいます。

 物理現実の制約から解き放たれて何にでもなれるのがバーチャル空間のいいところです。なので、自分の望む何かになれるということが救いになる方はたくさんいると思います。

 バーチャルの世界に行けばあなたが見えて居る現実はひとつだけかもしれないけど、世の中にはもっとあなたの想像しないような現実がたくさん存在するんだよっていうことが分かるんです。それを色々悩んでいる方に伝えたいです。(了)


 今回のインタビューでは「本当に新たな”現実”が生まれる」という実感や、バーチャル空間が多くの人にとって必要であるということを再認識することができた。また、「バーチャルマーケット」がもたらす機能というものはクリエイターの締め切りに設定することだけではなく、企業のIPを守ることや、違法アバターの減少につながっているという話は非常に興味的であった。

 VRに興味のある方はもちろん、現実に”ままならさ”を感じる方もぜひ「バーチャルマーケット5」に参加して、新たな経済圏・生活圏を目の当たりにしていただきたい。

「バーチャルマーケット5」公式サイトはこちら

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