「これを組み合わせたらどうなるんですか?」→「わかりません!」──なぜ『クラフトピア』は開発者ですら把握しきれない破綻やバグを乗り越え、売上50万本を達成できたのか

 2020年9月4日にアーリーアクセスで配信開始されたゲーム『クラフトピア』。ジャンルこそ「オープンワールドサバイバルアクションゲーム」となっているが、クラフトゲームをベースとして狩り、農業、ハクスラ、建築、自動化などの多彩な要素を盛り込んだ欲張りなタイトルだ。

 そんな『クラフトピア』では、TwitterやDiscordなどのSNSが積極的に活用されており、ユーザーが体験したスクリーンショットや動画の共有から、アップデートに対するリクエストからバグ報告までさまざまな交流が生まれている。
 ここまでは普通のゲームでもよくあることだが、『クラフトピア』が特異なのは、開発者が想定していない仕様をユーザーがこぞって発見したり、ゲーム中に実装されていない機能がユーザーによって開発されていたりすることだ。

 公式Twitterではこうした「野生のクラフトピア学会員」によるさまざまな活動が報告されており、あらゆる好奇心が試されている。ユーザーも運営も手探りで進んでいるそのさまは、まるで黎明期のMMOのような活気を感じさせる。
 今となっては珍しい、その勢いのある荒削り感がヒットしたのだろうか。日本のインディーゲームが、Steamで、しかもアーリーアクセスにも関わらず売上50万本を達成したのだというのだから驚きだ。
 
 従来のゲームコミュニティをゲーム会社が先生、ユーザーは生徒というある種の上下関係のある学校のようなものだとすると、『クラフトピア』の運営開発とユーザーの関係はまるで巨大な生徒会や部活動のようにも見える。『クラフトピア』は、どうしてここまでユーザー主体の盛り上がりを生むことができたのだろうか?

 「うちは『ユーザー原理主義』といえるぐらい、ユーザーに委ねます」──そう語るのは、ポケットペア代表の溝部拓郎氏だ。
 2019年にリリースした『Overdungeon』では既存のアセットを主体としたゲーム開発にトライし、オリジナリティ、クオリティ、セールスそれぞれの面で成果を上げ10万本を突破。

 Webサービス出身ならではの視点でインディーゲームに新風を吹き込む溝部氏は、開発チームの代表として何を考え、どのようにして『クラフトピア』というムーブメントを仕込んだのだろうか。
 しかし取材で見えてきた溝部氏の像は、ユーザーの反応を予め織り込む狡猾な策士というよりも、「面白ければいいんじゃない?」で突き進んでしまう野性味あふれるものであった。

 自動化でお金がほぼ無限になってしまっても、調整に時間がかかりすぎるので諦める。絶対にバグが出るのがわかっているから、予めゲーム内にバックアップを内蔵しておく等々。とても現代に現れたとは思えない証言の数々は、これからの時代ならではの、新しい形のゲーム開発のあり方を予感させるものとなった。

聞き手/TAITAI
文/野口智弘
編集/実存

溝部拓郎氏

国産インディーゲームでは異例のSteam売上50万本を達成

──まずは『クラフトピア』の売上50万本達成、おめでとうございます。

溝部氏:
 ありがとうございます。まだアナウンスはしていないんですけど、(インタビュー当時)ちょうど最近超えたところですね。

──日本のインディーゲームが、「Steamのアーリーアクセスのみで50万本突破」って相当な事件ですよね。ちなみに50万本の内訳はどうなっているんでしょうか?

溝部氏:
 たぶん20万本ぐらいは国内ですね。日本のユーザーのみなさんに愛されているゲームだなと感じていて、とても感謝しています。

──日本のSteamユーザーの割合を考えたら快挙ですよね。『クラフトピア』は企画自体はもちろん、それに合わせたストアページやSNSでの情報の出し方も鮮やかだったと思うんですが、いまの数字を目指すにあたっての何かしらの仕込みはあったんですか?

溝部氏:
 無いですね(笑)。いつもそうですけど、行き当たりばったりで運ばっかりだなと思います。

──インディーゲームってゲームの完成度とは別に、「面白さをどうやってユーザーにアピールするか」も問われるじゃないですか。『Overdungeon』も『クラフトピア』も、「まずユーザーに興味を持ってもらおう」という仕掛けがあって、そのためにゲームデザインが破綻しかねない要素も盛り込まれている。
 「バズる」感覚というか、面白さのトップスピードに重きを置いて、それを成り立たせるために全体をまとめ上げているというか。本作にはそういうノリみたいなものが感じられますよね。

溝部氏:
 はい、普通はもっと整合性を重視していくんですけど、強烈に面白いことがあったら、とにかく入れてしまう(笑)。その上でほかを調整していく作り方ですね。

──「ゲームシステムに全振りしたから、レベルデザインの調整は捨てる」みたいなピーキーな感じですよね。その辺の割り切りは、溝部さんがWeb出身だからなんでしょうか。

溝部氏:
 ユーザーがインディーゲームに何を求めているかを考えると、「安い」かつ「大手ゲーム会社が作らない」かつ「面白い」ゲームという無茶振りなんですよね(笑)。

 ただ、一見すると無茶振りなんですが、安いからクオリティの妥協は許されるし、斬新なシステムには寛容だし、多少説明不足でも面白ければ許してくれる。Steamアーリーアクセスにはそういう文化的な土壌があるので、ユーザーもある程度の割り切りを許容してくれる部分があるかなと思います。
 そもそもアーリーアクセスという考え方自体がすごくWeb的ですよね。ゲーム業界のエコシステムの一部としては非常に健全だと感じています。

 ただ、その分コンセプトを研ぎ澄ませなければならないので、PVはめちゃくちゃ意識していますね。PVだけでユーザーにどのように伝わるかを第一に考えて、開発中期ぐらいまではもはやPVのためにゲームを作っていますね(笑)。
 PVで評判が良かったら、それを元に再度ゲームを組み立て直して、評判が悪かった部分は考え直すという感じで進めていました。

──昔だと『クロノ・トリガー』みたいな作り方ですよね。まず #鳥山明 さんのコンセプトアートがあって、『ジャンプ』の特報記事に載せるゲーム画面を最初に作って、実際のシステムはそこから逆算でまとめるという。

溝部氏:
 僕もその話は大好きで、ゲームでもコンセプトアートは先に作る事は多いですが、『ジャンプ』と『クロノ・トリガー』の話はその一歩先を行っていたなと思います。

 その辺の話でいうと、最近のハイパーカジュアルでは、広告だけ出してゲームをリリースしないことすら一般的です。CTR(クリック率)さえわかればいいので、動画広告のリンク先がゲームアプリじゃなくてもいい。ゲームのPVになるところだけ作って流して、成果がよかったらゲームを作り始める、というやり方を実践しています。
 そこまで行くと恐ろしいと思う一方で、非常に効率的だなとも思いますね。

「『ゼルダ』と『マイクラ』を組み合わせたら最高じゃね?」という安易な発想で作り始めたら、大変なことになった

──今回はそういう既存のゲーム業界とはちょっと違う、新しい領域の話を溝部さんとできたらいいなと思っています。その部分があるからこそ、『クラフトピア』の成功がありえたんだろうなと。

溝部氏:
 前回のインタビューで『Overdungeon』は既存のアセット(素材)を使って作った話をしましたけど、ゲーム業界としても「全部ゼロから自作するのは大変だよね」という悩みはあると思うんですよ。
 だから『Overdungeon』では、「全部アセットでもちゃんと作れますよ」という形は示せたかなと思っていますね。

 でも、今回の『クラフトピア』は『ゼルダ』『マイクラ』を組み合わせたら最高じゃね?」という安易な発想が出発点だったんです。それで実際に作ってみたら、ゲームバランスは破綻するし、予想外の挙動やバグが無限に出てきて大変なことになったという(笑)。

(画像はSteam:Craftopia / クラフトピアより)

 そもそも「全部ごちゃまぜ」というコンセプト自体が、ゲーム業界的には最もナンセンスなやり方だと思うんですよ。普通のゲーム開発者に見せたら、絶対に「要素を絞れ」と言われますから。それ以前に、こういう企画を出してもまず間違いなく落とされますよね。

──普通のゲーム会社で、企画会議を通して……というやり方だとたしかに厳しそうですよね。それでも、やり切れる目算があったんですか?

溝部氏:
 目算というより、「破綻するのはわかってるけど、それでも大丈夫」という感じですね。普通のゲーム開発だと、破綻しそうな部分や噛み合わなさそうな部分を気にしちゃうと思うんですよ。ただ、僕らの場合は噛み合わないとして、本当にそれが問題かどうかが重要かな、と思ったんですね。噛み合わなかったり破綻したとしても、面白ければいいんじゃないかと。

 たとえば『クラフトピア』にもエンチャント(能力付加)ってあるじゃないですか。ハクスラ要素があるゲームだと、拾った武器ごとにエンチャントも違うから、同じ種類の剣でも10個拾ったらインベントリは10個埋まる。
 ただほとんどのハクスラだと、素材にまでエンチャントはつかないんですよね。仮に素材にもエンチャントできると、硬い鉄、柔らかい鉄、ゴブリンの鉄、 #スケルトン の鉄……とさらにインベントリ上で全部バラバラになっちゃう。
 『クラフトピア』の場合は素材にもエンチャントできるので、当然インベントリがあふれちゃう問題があって、それも破綻するのはわかってたんですけど、「面白いからやろう」と。

──結局どうなったんですか?

溝部氏:
 いまだにインベントリが足りない問題はあって、ユーザーからの要望も届いていますし、少しずつ改善してはいるんですが、やっぱりまだ問題はありますね。
 問題はあるんだけど、同時に面白い部分につながっている部分でもあるので、調整しながら上手く組み立てて行きたいと思っています。破綻というよりは取捨選択の問題だなと。

バグるとわかっているなら、最初からバックアップを内蔵すればいい

──ほかにも「全部ごちゃまぜ」にした結果生まれた不整合や破綻ってどんなものがあるんでしょう?

溝部氏:
 自動化がいちばんヤバいですね。そもそも自動化って、ほかの要素とだいたい噛み合わないんですよ。一度自動化できちゃえば、そのリソースは無限になるじゃないですか(笑)。

(画像はSteam:Craftopia / クラフトピアより)

──たしかに(笑)。

溝部氏:
 そうするとレベルデザインもゲームバランスもあったもんじゃない。自動化を入れただけで、いろんなものを考慮しないといけなくなっちゃって、コンテンツが増えれば増えるほどバランスが取れなくなってしまう。
 だから、自動化ってゲームデザインを知っている人にとっては“見えている地雷”なんですよ。「ここが問題だよね、ハイ論破」で終わりますね(笑)。

 でも、うちは現時点ではそのバランスは捨てていて、わかっている上で「でも面白いからやるね」と突き進むスタイル。「これとこれを組み合わせたらどうなるの?」と、予期せぬいろんなことが起きてしまうわけで、当然バグは出るよねという(笑)。

──(笑)。

溝部氏:
 バグは出るんですけど、深刻なものはちゃんと直すようにしています。わかりやすい例でいえば、お金は自動化を入れたら「絶対増えるな」とわかっていたんですよ。でも調整にも時間がかかるから、あきらめました。結果、みんなのお金はほとんど無限になりました(笑)。

 普通はゲームシステム上、お金はコストとして考えるじゃないですか。だから、お金をコストとして使ってスキルをリセットする、みたいなシステムは実装できないわけですね(笑)。現状はそうしたバランスやデザインを一旦諦めている状態なので、いろんな犠牲はともなっています。

──お金が自動化で無限になったりだとか、そういうユルユルさも含めてユーザーに受け入れられているんですね。ほかにもどんなふうに楽しまれているのかが気になります。

溝部氏:
 みんなそれぞれ違ったところにハマってるみたいですね。建築にハマる人もいるし、エンチャント沼にハマる人もいるし、バグを探すのが楽しいという人もいる。
 あと特徴的なところでは、自動化が好きなユーザーってだいたい変な人なんですよ(笑)。

──なんとなく想像がつきます(笑)。子供の頃におもちゃを分解して壊してそうな人たちですよね。

溝部氏:
 そんなイメージです。少なくとも普通ではない。自動化という発想に至るとだいたい普通じゃなくなりますよね。
 自動化でいろいろ試して「バグった。じゃあ報告するか」みたいな勢いで、みなさん結構いろんなことをやられていますね。最近はとうとうゲーム内で回路を作って計算して「このゲームがチューリング完全だと証明される日も近い」と言っている人がいるみたいで(笑)。

──そういう形で、初期のMMOのような「ユーザーも運営も手探り」なゲームがまさかこの時代に現れるとは、と思いましたね。

溝部氏:
 そこはある種の反動もあると思いますけどね。というのは、ゲーム開発も業界が成熟したことにより、ある程度きちんとしてきているので。テストも自動化されたりとか、まともな会社が作るゲームはQA(品質管理)で許されないことはあらかじめ起きないようになっていると思うんです。
 だからこそ、インディーでこういうめちゃくちゃなゲームが出たら、ユーザーにとっては物珍しく映るのかもしれないです。

(画像はYouTube「Craftopia – CM 「IGNITE YOUR CREATIVITY」-003 -」 より)

──そういうライブ感にあふれる体験をいまできるのは貴重かもしれないですね。

溝部氏:
 『クラフトピア』は、僕ら運営が意図してないことが無限にありすぎて、“何をしてもだいたい意図してない”という結果になるんですよ(笑)。

 あるオブジェクトが1個だったら大丈夫なのは確認したとして、「そのオブジェクトが20個あって、他のオブジェクトと組み合わさったらどうなるの?」というテストはしません(笑)。「クラッシュさえしなきゃいいや」という気持ちでやっています。

 プログラムって、ある程度は組む前にバグりそうかどうかはわかるんです。少なくとも複雑度はあって、バグりやすい仕様とバグりにくい仕様があるんですけど、うちはバグりやすくても面白ければ突き進むスタイルなんです。

※α版で発生した「チェンソーマン」バグ。現在は修正されているが、ユーザーからは「むしろ別の形で実装してほしい」「かつてこういうバグがあった記念に、頭に装備できるドリルがあってもいい」といった好意的な反応も寄せられていた

──進行不能やフリーズのような致命的なバグがあった場合はどうしてるんですか?

溝部氏:
 もちろんこちらも完全に無責任なつもりではなくて、必ず問題が起きるとわかっているので、あらかじめゲームのなかにバックアップシステムを内蔵しているんです。ユーザーが何にいちばん怒るかというと、セーブデータが壊れたときなんですね。

 だから、セーブデータだけは消えないようにして「問題が起きたらバックアップから復元してください」としています。そうすると。ユーザーも「また壊れた。まあ、戻せばいいや」ということで(笑)。
 怒られますし、大変申し訳ないとは思っているんですが、ギリギリ許してもらっている……と思っています(すみません)。

──壊れるとわかっているなら、最初からバックアップを内蔵すればいい、と。逆転の発想ですね(笑)。

溝部氏:
 こういう話をすると、「ユーザーを軽視している!」「未完成なモノを売るな!」と怒られることもあるのですが……

 「多少バグっても、万が一セーブデータが消えても、バックアップから復元すれば大丈夫です」なんて、自分でも酷いゲームだと思います。でも一方で、デバッグの工数などを大幅に削減することができているのも事実です。こういう手法のおかげで、荒削りではあれ面白いゲームを最速で作ることができるんじゃないかと思っています。

「これとこれを組み合わせたらどうなるんですか?」→「わかりません!」

──『クラフトピア』って、荒削りであるがゆえに初期のMMOっぽいじゃないですか。当時のMMOで何が楽しかったかって、ゲームバランスとかではなく、とにかく目新しい体験があって「こうしたらどうなるんだ?」という好奇心なんですよね。
 『ウルティマオンライン』で悪いことしても捕まらなくて「これって抜け道だよね?」って見つけたその日は荒稼ぎして、一週間後に同じことをすると修正されてて今度は捕まるわけですよ(笑)。『クラフトピア』の面白さも、そういう感じに近いのかなと。

溝部氏:
 そうですね。とりあえずPVや実況動画を見て、面白そうと思って入ってきたライトな人もたくさんいるんですけど、本当にハマっていく人は自分で何か発見をするタイプの人ですね。
 そういう人たちから「これとこれを組み合わせたらどうなるんですか?」と聞かれることもあるんですけど、僕らの答えは「わかりません」なんですよ(笑)。

──わからないんですか(笑)。

溝部氏:
 僕らも試してないから、本当にわからないんです。やった結果問題が起きていたら「ああ、すいません……」みたいな(笑)。

──とても令和とは思えない……(笑)。バグの指摘でいえば、「野生のクラフトピア学会員」みたいなツイートもバズっていましたよね。

溝部氏:
 しかもこれ、バズったのは『クラフトピア』の画像ですらなくて、メッセージのスクリーンショットなんですよ。SNSでバグをユーザーから教えてもらって、直し方も的確とか、そんなの聞いたことないですから。
 ちなみにこの直し方を教えてくれた人は採用させてもらって、いま一緒に働いています(笑)。

──それはめちゃくちゃいい話ですね(笑)。

溝部氏:
 最初はこんなに的確な指摘をしてくるから、「よっぽど詳しい業界人なのかな」と思いきや、優秀な若い子でしたね。


作家性よりも、「みんなが面白いと思うもの」を作りたい

──でも、そういうところも含めて「一緒に作っていきましょう」というユーザーと同じ側にいるようなスタンスを見せているじゃないですか。あれもうまいやり方だなと思いました。

溝部氏:
 それは狙ってるわけじゃなくて、本当に自分たちだけじゃ『クラフトピア』は作れないと思ってるんですよ。「最高のゲームを作りたい」というのは前提として、「何が最高のゲームかは」ユーザーに聞いてみないとやっぱりわからない。
 自分たちの表現したいものだとか作家性というよりも、ただただ「みんなが面白いと思うもの」を作りたいんですよ。そのみんなが面白いと思うものは、みんなに聞いてみないとわからないですよね。だから、「ユーザーと一緒に作っていきたい」というのは本心からです。

──それってやっぱり、完全にWeb的な感覚ですよね。マンガや小説、コンシューマーゲームなんかとは決定的に違う観点というか。もちろんそういうジャンルのクリエイターもユーザーのことを考えてはいるけど、まず作り手に表現したいものがあって、それを編集者やプロデューサーが広くたくさんに届くようにしていくという仕組みじゃないですか。溝部さんの話を聞いていると、その出発点がそもそも違う気がしますね。

溝部氏:
 うちは完全にユーザーが主という発想ですね。「ユーザー原理主義」というぐらいユーザーに委ねています。

──とはいえ、ユーザーに“媚びてる”わけでもないですよね。

溝部氏:
 ゲームで「ユーザーに媚びてる」と言われるときって、「ユーザーに見返りを期待している」ように受け取られるときだと思うんですよ。たとえば、MMOやソシャゲの運営なんかで「こういうの好きでしょ? だから課金してね」みたいな。

 うちは見返りよりも、ただ面白いものを一緒に作りたい。僕がやっていたWebサービスの分野だと、あんまりクリエイターの作家性みたいな言葉を聞いたことがないんですよね。みんな「面白そうだからちょっと作ってみるわ」みたいな感じで、それがほかの人にとっても面白かったり、便利だったりしたら広がっていく

──これからのゲーム業界が持つべき観点のひとつって、まさにそこだと思うんですよ。「閉じた作家性」だけじゃ戦い切れないんじゃないだろうかと。『クラフトピア』はゲームの中身と、ゲームの遊ばせ方のマインド、溝部さんやポケットペアの立ち居振る舞いがすべて有機的に絡み合っている感じがするんですね。
 でも、ユーザーの意見を取り入れる一方で「これ面白いよね?」というのを選別して仕掛けるのって、純粋な作家性とは違うかもしれないけど、クリエイティビティがある話じゃないですか。

溝部氏:
 そうですね。

──だから溝部さんの作風は、作家というよりはキュレーターやインフルエンサー的な提示の仕方に見えるんですよ。作家が「自分の原体験をゲームにしたい」のではなくて、「『ゼルダ』と『マイクラ』を組み合わせたら最高じゃね?」という出発点だとか。

溝部氏:
 おっしゃることはわかります(笑)。たとえば音楽の歴史もクラシックから始まって、ロックがあって、最近はマッシュアップのように「組み合わせる」方向になってきていますよね。ゲーム業界もある程度の歴史を積み重ねてきたからこそ、組み合わせとして発展していくというのは歴史的にも妥当な話なのかな、と個人的には思っていますね。

 また、自分自身がどんなゲームを作りたいかを考えたときに、チェス『テトリス』のように後世に残るような、ずっと楽しめるゲームを作りたいと思っていた時期もたしかにありました。
 でも、あるとき「ゲームって、どこまでいっても消耗品だな」ということに気づいて、それからは消耗品であることを意識するようになりました。これ、言葉尻だけ捉えられると、すごく批判されそうなのでちゃんと話しますね(笑)

 たとえば『テトリス』なんかは相当長持ちですけど、基本的にはコンテンツって消費されていくものじゃないですか。普通の人は、映画は1回見たら終わり。ゲームも一度クリアしたら終わり。当たり前の話なんですけどね。ゲームを作るときも、気持ちとしては一生遊んでほしいんですけど、現実的には「いまの時代にだけ遊ばれるもの」で、100年後200年後には好事家を除いてほとんどの人は遊ばない。
 だから完璧を目指してもしょうがないというか、未完成であることをそこまで気にしなくなったのかもしれないです。

──人間の体験ってどうしても最初の一回めが濃密で、そのあと同じような体験をしても、それが薄れていくような性質がありますよね。だから、コンテンツも似たような性質を帯びてしまう部分があると思います。

溝部氏:
 「自分で作ったものが、消費されるだけ」というのは受け入れがたい人もいると思うんですよね。ゲームシステムがすごく好きな人が理想のパズルゲームを作ったら、それは一生遊べるものだと思いたいでしょうし。
 クリエイターって、自分が作ったものに対して、我が子のように愛情を感じてしまうもので、消耗品って言われると本当にガッカリするんですが、それでも耳の痛い現実だと受け止めて、「それでもみんなに楽しんで欲しい」という気持ちで作っています。

(画像はSteam:Craftopia / クラフトピアより)

「撮れ高」を意識して作る、『クラフトピア』の“ユーチューバビリティ”

──いまのコンテンツってビジネス的にもパッケージからサービスに移ってて、音楽もCDからライブになったりしてるじゃないですか。そういう一度きりの体験の価値が大きくなっていると感じていて、『クラフトピア』で起こってる盛り上がりってまさにそういうライブ感があるなと。

溝部氏:
 それは思いますね。僕も昔はコンテンツの再現性を考えていたんですけど、「その瞬間だけ面白ければいい」というのも意外と真理だなと思い始めました。

 たとえば『クラフトピア』のPVでも、どこがウケるのかは作っているときにはわからなくて。結果として「牛を鍋で煮る部分」が一番ウケたんですけど、あれほどバズるのは想定外でした。

牛を鍋で煮る部分

 じつは、あれは僕が撮影したんですよ。料理も自動化できることを伝えたいと思って、鍋もあったし「じゃあ入れるか」という感じで。だから、僕のなかでは牛を鍋に直接入れることがそんなにおかしいとは思ってなかったんですけど、落ち着いてよくよく考えると「おかしいよな」という感じでした(笑)。

 いまってゲーム体験を共有するコミュニティの面白さも重要だし、自分が何か特別な体験をしたら、やっぱり共有したくなると思うんですよ。自分もバグを見つけたらすぐ報告したくなりますし。

──「バグを見つけて大変なことになったから見てほしい」というのはすごくピュアな感覚ですよね(笑)。

溝部氏:
 「最強の剣を作ったぜ」と「すごいバグ見つけた!」は同じなんですよね。
 そういうYouTube映えする要素というか、“ユーチューバビリティ”みたいなものを、作り手の側も意識するのは大事かなと思います。

──なるほど。そのユーチューバビリティを意識するなら、バグさえも面白いものとしてコンテンツになりうると。そうなると、今後は「意図的にバグを残す」みたいなゲームデザインが増えていくのかもしれませんね。

溝部氏:
 それは一大テーマだと思いますね。僕もバグをどう直すかはいつも悩んでいます。
 鑑賞の仕方が決まっているカルチャーってあるじゃないですか。クラシック音楽なら静かな空間で聞いてほしい、みたいな。でもゲームは結局エンタメなので、もうちょっとゆるく、「ユーザーが喜ぶなら自分たちの意図したとおりじゃなくてもいいや」というか、ユーザーがどういう楽しみ方をしても受け入れることが大切なのかなと、最近は思います。

 『クラフトピア』を作っているときも『ARK』の実況動画が盛り上がっていたから、そういう面白さがあるゲームを作ればきっと楽しんでくれるだろうなと思っていました。最近は実況されるかどうかだけじゃなくて、「どう実況されるか」まで結構イメージできるようにはなってきましたね。

(画像はSteam:Craftopia / クラフトピアより)

──ゲームの仕様を考えているときから、どう実況されるかをイメージできるということですか?

溝部氏:
 そうですね。たとえば『クラフトピア』のユーチューバビリティでわかりやすいのはウンコとか(笑)。ウンコはPVに入れてもしょうがないけど、ユーチューバビリティを考えると入れたほうがいい仕様なんですよ。
 だからPV映えする要素と、ユーチューバビリティはちょっとイコールではないところがありますよね。

──「ユーチューバビリティ」をもう少しわかりやすく言い換えるとどうなりますかね?

溝部氏:
 うーん……撮れ高?

──なるほど。「動画映え」というよりは、「撮れ高」ですか。

溝部氏:
 そうですね。要するに「撮れ高を作ってあげる」、実況者から見ておいしいところを作る、というつもりでゲームを作るのがユーチューバビリティですかね。
 もちろん「動画映え」も重要で、動画映えはPVとも密接に絡むんですけど、「撮れ高」と言うほうが、よりユーチューバビリティに近いと思います。

 いまは膨大な数のゲームがあって、どの実況者も「どれを実況したら自分のファンが喜ぶか」という視点で実況するゲームを探しているじゃないですか。実況者にとっては、流行っているゲームをやるのは当然として、その上で自分の個性が出やすいゲームがベストですよね。
 みなさんそれぞれ個性があって、それぞれの戦略や編集があるわけですけど、それがちゃんと表現できる度量のあるゲームであるかどうか、つまりユーチューバビリティが高いゲームであるかどうか、というのは本当に大事だなと思います。

──ユーチューバビリティが高いというのは、実況者が「しめしめ、これはネタになるわ」と思えるようなものだと。

溝部氏:
 そんな感じですね。毎日ゲームを配信して動画を作るのってめっちゃ大変なのに、新しいゲームに手を出してもしつまらなかったら、場合によってはボツになるわけじゃないですか。
 そんなふうに、毎日撮れ高を探し続けるのは本当に大変だと思います。だからこそ、実況者側としてはいつも「何かハプニング起きてくれねえかな?」と思っているだろうし。

(画像はYouTube「Craftopia – CM 「IGNITE YOUR CREATIVITY」-002 -」 より)

──でもそれって、ユーザー向けの観点では不思議な話ですよね。50万人のユーザー全体よりも、『クラフトピア』を実況する一部のユーザーを特に意識しているわけじゃないですか。だけどその少数に向けてのゲームを作ることによって、ゲームを直接プレイしない100万人、200万人にも届く可能性が出てくるわけで。

溝部氏:
 おっしゃるとおりですね。そのへんの話でいうと、みんな「実況者の真似をして遊ぶ」のが面白いなと思うんです。もちろん『クラフトピア』に限ったことではないんですが。

──とくに低年齢層では顕著ですよね。

溝部氏:
 小さい子ほど、本当に真似するんですよ。でもこれってじつはすごいことで、本来は難しいはずの『マイクラ』が遊べるようになっちゃうんですよね。

 実際、『マイクラ』を予備知識なしでゼロから遊べって言われたら、めちゃくちゃ難しいじゃないですか。僕自身、アルファ版でやったときも何していいかわからないから、速攻で攻略ウィキを見に行って「こう置くとクラフトできるのね。でもこれ初見で気づくの無理でしょ」みたいな(笑)。

 ウィキを読みに行く気がある人はまだいいけど、読まない人もたくさんいる。じゃあなんで難しい『マイクラ』が小学生でもプレイできるかと言うと、みんな実況者の真似をしているからなんですよね。ゲームで難しい仕様があっても、実況者が実況すれば難しくなくなるという、ある種の動画マニュアルが自動的に作られる。いまはそこまで想定して、ゲームを作らないといけないんだなと。

インディーだからこそ、割り切れる力がある

──『マイクラ』でも「どこまでチュートリアルを入れるべきか」という判断は当然あるはずなんですけど、そこをかなり割り切っているんですよね。

溝部氏:
 そこは難しいところですよね。実況動画で説明してくれるから、どんなゲームでも大丈夫という話でもない。結果として、チュートリアルがなくても『マイクラ』がうまくいったのは実況動画のおかげでしょうけど。

──ほかの例で言うと、『チックタック』というインディーゲームは、ふたりで協力しながら遊ばなきゃいけないゲームなんだけど、ゲーム内に連絡手段はなくて、ゲーム外でLINEや電話をしながら遊ぶ仕組みなんですよ。おそらくコンシューマーゲームだったらプレイヤー同士の連絡手段もゲームに入れようとするんだけど、こういうのもインディーならではの割り切りですよね。

(画像はSteam:チックタック:二人のための物語(Tick Tock: A Tale for Two)より)

溝部氏:
 Discordを超えるボイチャをゲーム内に用意するのは無理ですからね(笑)。ただ「協力ゲームだから、ゲーム内にボイチャを実装するべきだ」という意見って、一見正論だからこそ厄介ですよね。

──でも現実的に考えると、ゲーム内にボイチャを実装するほうが手間だったりするじゃないですか。

溝部氏:
 本当にそうなんです。だってDiscordやLINEのほうがどう考えても便利だから。

──インディーの強みって、そういうところを個人で割り切れることですよね。「だって作れないし」みたいな。

溝部氏:
 うちも割り切らずにゲームバランスを整えてたら、リリースにあと半年から1年はかかっていたでしょうね。そもそも完成できたかも怪しい。

──ただバランスが悪かろうが、少なくとも楽しさは維持しないといけないわけじゃないですか。「ちょっとバランス悪い、でも楽しい」というのを担保するために、溝部さんは何を大事にしていますか?

溝部氏:
 シンプルに、『クラフトピア』じゃないとできない体験を用意する事は大切だと思っています。
 たとえばキャンプファイヤーを置いたときに、乗ったら体に火が点いちゃうんですけど、普通は「そんなのダメじゃん」って反対されるんですよ。でも「うわ燃えた!」みたいなのは笑えるから、それはそれでいいじゃんという感じで。

(画像はSteam:Craftopia / クラフトピアより)

──チュートリアルに「火傷してみましょう」という項目があるのはかなり衝撃的でした(笑)。

溝部氏:
 それで今度は牛がキャンプファイヤーで勝手に燃えて、燃えてる状態で歩いたら木にぶつかって、その木も燃えて……みたいなのって『クラフトピア』じゃないと味わえない体験かなと思います(笑)。

 クラフトゲーム自体はけっこう数があるんですけど、ここまで想定外のことが起きるゲームはそんなにないだろうなと思ってます。ほかにも大砲を置いたのに、床が傾いていてコロコロ落ちていったら「おいおい」と思うじゃないですか(笑)。

 じつは、最初は大砲は転がらないように、固定オブジェクトだったんですよ。でも「固定しちゃうとベルトコンベアで運べないけど大丈夫?」「ダメでしょ。ベルトコンベアあるなら運べないと」「じゃあベルトコンベアで運べるようにするけど、坂に置いたとき転がるけど大丈夫?」「いいんじゃない?」みたいなノリで。

 まあ、開発者が笑っちゃうことはだいたいユーザーも笑いますし。僕自身も最低限の社会常識はあるつもりですけど、どちらかと言うとナチュラルに不謹慎なタイプなので、そういうのは大好きですね(笑)。

──溝部さんは『クラフトピア』を作ってみて、クラフトゲームを作るポイントってどこだと感じましたか?

溝部氏:
 どういうシステムにするとユーザーの意図してないことが起こりやすいか、というのは実は明らかで、それは物理演算なんです。だからクラフトゲームの場合は、物理演算の要素をいかにうまく使いこなすかがポイントなのかなとは思っています。

 あと、自動化はクラフトゲームではこれまでありそうであまりなかった要素かなと思います。クラフトゲームって自分でクラフトするのが面白いんで、普通は「自動化してどうするんだよ」という発想になるわけですよ。農業ゲームで「最終的に農業が自動化できます」となったら、「自分でやるのが楽しいのに」みたいな反対意見も出るでしょうし。

(画像はSteam:Craftopia / クラフトピアより)

──たしかに、『マイクラ』でも自動化は応用の部分に入りますよね。

溝部氏:
 そうですね。工業化MODなんかもそうですけど、やりたい人はやるけど、やらない人はとことんやらない。まあ、『クラフトピア』に関しては素直になんでもペタペタくっつけて作っている感じなので、僕だけが気づいたクラフトゲームの秘訣のようなものはあんまりないですね。

──『マイクラ』ではMODも盛んですけど、『クラフトピア』ではMODに対してはどういうスタンスなんですか?

溝部氏:
 『クラフトピア』でMODはできるようにしたいなと思っていて、作り始める前にMOD開発者にいろいろ話を聞いたら「IL2CPPはMODが作りにくいから、Monoでやってくれ」【※】と言われたんですよ。Unityでゲームを作る場合って、だいたいIL2CPPにするんですけど、IL2CPPにするとコードが読みづらくなるから、MOD開発が簡単にはできなくなっちゃうんですね。

※IL2CPP、Mono
ともにUnityでサポートされているコンパイラ。IL2CPPでは、中間言語をC++に変換するため、実行速度が速くなったり、解析されづらくなるという利点がある。

 で、どっちがいいか悩んだんですけど、べつにソースコードが見られてもいいだろうと(笑)。MonoにするとMODだけじゃなくて違法コピーも作られやすいんで、まずい部分もあるんです。実際に『クラフトピア』の海賊版も出ているので、本当は対策しないといけないんですけど……。

 でもそもそも『マイクラ』だってそういうガチガチのゲームじゃなかったし、『クラフトピア』もコミュニティの協力は不可欠だから、MODも作れないとゲームとしては伸びないだろうと思っていたので、悩んだ結果Monoで行った感じです。
 その点では、事前にMOD開発者に聞いておいてよかったですね。実行速度はIL2CPPのほうが速いし、現にゲームの動作が遅いのは直さないといけないんですが、選択するときはよりユーザーに広がりやすいほうを選んでますね。

延期するか否か、未完成でも提供したかった面白さ

──『クラフトピア』のパブリッシャーを名乗り出た人たちが口を揃えて「もうちょっと完成度を上げてから出したほうがいいよ」とアドバイスしたそうじゃないですか。そこをあえて延期せずにリリースに踏み切ったのはなぜですか?

溝部氏:
 もっと遅らせれば完成度は上げられるんですけど、何年もかけて作りたくないとも思っているんです。出すまでどのぐらい価値があるかわからないものに何年もかけられないし、トータルのスピードを考えればリリースしたほうがフィードバックも受けられるから、さっさと出しちゃったほうがいいやと思っていて。そこはWeb的な発想かもしれません。

 Steamって、たしかに初動で失敗するとずっと不評になって売れないというパターンがあるのでそこは難しいんですけど、クラフトゲームに限っては「ある程度未完成な部分を許容する文化があるだろう」という見込みもあってリリースしました。

──「コケてもこうリカバリーすればいいや」という対応策はあったんですか?

溝部氏:
 なかったですね。コケてもがんばるつもりでしたけど、やっぱりSteamで不評がたくさんついたらかなり厳しいです。パブリッシャーの方からは「1年ぐらい伸ばしたら?」とも言われたんですけど、せっかくINDIE Live Expoなどでも注目されていたので、できるだけ早く出したくて。

 ただ、「未完成であっても面白い部分はなるべく早めに提供したい」と考えながら作っていました。 #AAA のゲームではプレイヤーの成長を実感させるために後半に面白いコンテンツを置きがちですけど、『クラフトピア』は安いし、つまらなかったらすぐやめちゃうと思うんですよ。
 だから最初にある程度盛り上がりを持ってきてあげるのは意識してますね。ホバーボードも進化したらすぐ使えるだとか。

(画像はSteam:Craftopia / クラフトピアより)

──初動で失敗するとまずいという話でしたが、Steamでの売り方で意識した部分はあるんでしょうか。

溝部氏:
 この間のハロウィンセールにも合わせるかどうかも悩んだんですけど、セールでの売り方はセオリーがわからないんですよ。ハロウィンセールはサマーやウィンターに比べて短いから、大手はセールをしないのではという予想もあるんですけど、売上の最大化のために全部のセールに参加したほうがいいのか、あるいは時期を絞ってそこでランキングを上位に上げたほうがいいのかとか、いろいろ難しい。

 年末のウインターセールが本番なんですけど、競合も多いのでどうしようかなと考えているところです。『Overdungeon』ではちょうどセールのときに有名な実況者さんが実況してくれて売れたことがあって、日本のインディーゲーム業界でもっとそういう知見が共有されてたらいいんですけど、現状はほとんど情報がないですね。

『Among Us』はユーチューバビリティの極地のようなゲーム

──『クラフトピア』ではひとまずの成功を収めたといって過言ではないと思いますが、今後、溝部さん自身がポケットペアという会社でやっていきたいことは?

溝部氏:
 会社のことはめっちゃ難しいんですよね。もちろん今後もゲームは作っていくんですけど、いろんな会社から「お金をかけてもっとすごいゲームを作って、もっと売らないか」と言われています。

 大変ありがたいことなんですけど、でもいまの僕の作り方は、どう考えてもそういう作り方じゃないんです。市場の隙間を縫ってゲリラ的に特定の場所に特化してぶち抜くみたいな、要はメジャー路線じゃないってことですね。
 運良くメジャーに引っかかることもあるかもしれないですけど、いまのやり方と、お金をいまの10倍や100倍かけてとにかくすごいものを作って売るというのは、作り方が全然違うので。だからインディーでそれなりの成果を出せた上で、ここからメジャーに行くのが正解なのかどうか、みたいな話になってきます。

──溝部さんの勝ち筋は大きく張るタイプじゃないですよね。

溝部氏:
 少なくとも現時点では絶対そうで、大きく張れる自信もないですね。いままでずっと、ゲームシステム特化でシナリオ・世界観は完全無視して作ってきているので、何か噛み合うなら今度はそこも意識したものを作りたいな、とは思っています。

 現時点では何も浮かんでいないですけどね。しばらくは『クラフトピア』で忙しいので、すぐには新企画は出せそうにもないですが、強いていえば「次回作のヒントになるかもしれないな」と思っているのは『Among Us』です。ああいうマルチで4人とか5人で遊ぶ前提のゲームを作ってみたいですね。

(画像はSteam :Among Usより)

──たしかに盛り上がってますね。アクションゲーム版の人狼という感じで。

溝部氏:
 『Among Us』はユーチューバビリティの極地みたいなゲームなんですよ。日本と中国以外ではずっと世界ランキング1位で、『クラフトピア』の9月の売上は完全にこれに奪われましたね(笑)。
 リリースは2018年なんですけどブレイクしたのが今年の夏からで、なんで売れてるのかなと思って遊んでみたら、これが死ぬほど面白くて衝撃でした。うちは『フォートナイト』が出たときも「これは面白い」と思って死ぬほどやって、オートチェス『Fall Guys』が出たときも死ぬほどやって、トレンドのゲームは絶対やるようにしているんですよ。
 全部、面白すぎて感動してます。トレンドになるゲームは、やっぱりすごい。

 ゼロから何かを作るのが得意じゃないというか、僕がつい流行に目移りしちゃうので(笑)、改造や組み合わせからやりがちですね。「自分ならもっといろいろできそう」というのは僕のゲーム作りの根本的な部分かもしれません。

──溝部さんの考える人狼型ゲームや『Among Us』は遊んでみたい気がしますね。

溝部氏:
 トレンドの後追いのゲームって本当にたくさん出るんですけど、バトロワって後追いするのは比較的簡単なんですよ。ただ『Among Us』はここからどうアプローチしていいか、僕もわかってない謎のゲームなんで、だからこそ作り変える余地があるかなと思ってますね。

 たとえばバトロワから『Fall Guys』になるまでにはちょっと発想の飛躍があるじゃないですか。最初の『PUBG』からすぐに『Fall Guys』は作れないと思うんですよ。同じように『Among Us』から派生した何かを後追いで作るときにも、結構ジャンプする必要があるなと思っていて。
 現状は『クラフトピア』で手一杯ですけど、そういうゲームは今後取り組んでみたいことのひとつですね。(了)


 「『ゼルダ』と『マイクラ』を組み合わせたら最高なのでは?」というシンプルな発想からスタートしながらも、ユーザーとのやり取りを積み重ねることでどちらの元ネタとも異なる独自の進化を続けている『クラフトピア』。

 『Overdungeon』から1年という期間でインディーの規模としては異例の成功を収め、多くのパブリッシャーから次回作のオファーを受けるなど、業界で大きな注目を浴びているのも頷ける話だ。
 「僕が流行に目移りしちゃうので」と語る溝部氏だが、同時代のタイトルにインスパイアされながらも、そこから単なる後追いではないゲームを作っていくであろうことは想像に難くない。

 「ユーザー原理主義」を掲げる溝部氏とポケットペアが今後『クラフトピア』をどのような遊び場として発展させていくのか、そしてまだ見ぬ次回作でどんなものを作るのか。
 もしかしたらその鍵となるのは『クラフトピア』を自分なりの楽しみ方でプレイし、それをネット上で共有していく我々ユーザーの遊び方次第なのかもしれない。

『クラフトピア』 steam版はこちら『クラフトピア』 公式サイトはこちら

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「これを組み合わせたらどうなるんですか?」→「わかりません!」──なぜ『クラフトピア』は開発者ですら把握しきれない破綻やバグを乗り越え、売上50万本を達成できたのか