コロナ禍で応募数激増…ガンプラNo.1を決める『オラザク選手権』主催に聞く“TOP OF モデラー”の資質

 オリジナリティあふれるものから、リアリティを追求したものまで、多種多様なガンプラがSNSによって発表されている現代。このSNSが台頭するはるか前から、ガンプラモデラーたちの大きなモチベーションになっていたのが、雑誌『ホビージャパン』が主催する『オラザク選手権』だ。「大賞」を目指し、自らの腕に磨きをかけた多くのモデラーの1年の集大成ともいえるこの一大イベントが、今年も開催され、同誌11月25日発売号で結果が発表された。ではいったいどんな作品が、どのような基準で“TOP OF ガンプラモデラー”に選ばれるのか。これまでの応募作品の傾向や変遷、審査の基準などを、同誌編集部で『オラザク選手権』を担当する舟戸康哲氏に聞いた。

■他コンテストに応募予定だった作品も参入、大混戦の今年の『オラザク』

━━今年はコロナ禍という特殊な状況下で、“おうち時間”が増え、SNSには“積みプラ”(購入したものの、組み立てずに箱のまま積み上げられたプラモデル)を組み立てた人がたくさん発表していました。

例年と比較し、今年の『オラザク』はいかがでしたか?

【舟戸】そうですね。近年は、だいたい1200前後の応募なのですが、今年はコロナの影響で、自宅でプラモデルを作る人が増えたことに加え、おそらく他の類似コンテストが中止されたことも関係し、史上最多の2008の応募がありました。作品を観ていて、「このテイストの作品は、うちじゃなくて、他のコンテストに出すつもりだったな」とか、なんとなくわかりました(笑)。もちろん、ガンプラが40周年を迎え、記念キットが発売されるなど、盛り上がりを見せたことも影響していると思います。

━━今年は「NZ-666クシャトリヤ」が大賞を受賞しましたが、舟戸さんのなかで、特に印象に残っている作品はありますか?

【舟戸】金賞を獲った作品なんですが、発売されていないガンプラのキットとパッケージを作ったものですね。ランナー(組み立てる前のパーツが枠内に収まっている)の状態が完成品という発想は初めてでしたし、個人的に『プラモ狂四郎』が好きということもありまして、1/144のキットで再現されたこのレッドウォリアーが、めちゃくちゃ印象に残っています。

■カスタムやオリジナル作品を共有する場として『オラザク』が誕生

━━そもそも、なぜ御社がガンプラのコンテストを行うようになったんですか?

【舟戸】創業当初のミニカー専門誌から、プラモデルをその人気の高まりを受けて取り扱うようになり、81年に、ガンプラブームに合わせて出版した『HOW TO BUILD GUNDAM』が爆発的にヒット。以来ホビージャパン=ガンプラというイメージが定着しました。

 95年に「マスターグレードガンダム」という今までのガンプラをアップグレードしたハイクオリティな商品が発売され、ガンプラブームが再燃したのですが、本誌では、開発当初から記事で紹介するとともに、素材としてせっかくいいものが発売されたのだから、もっと楽しもうという趣旨で、改造して自分だけの機体を作ったり、まだ商品になっていない機体を再現してみたり、そういう楽しみを提案する連載をスタートさせました。その連載から生まれたのが『オラザク選手権』コンテストです。連載のタイトルが「オラがザクは世界一」だったので、略してこの名称になりました。

━━『オラザク』のタイトルの秘密がそんなところにあったんですね。実際第1回にはどのくらいの応募があったのですか?

【舟戸】323点もの作品が送られてきたそうです。模型コンテストを誌面上で開催するという経験は初めてでしたし、何より、フィルムで撮って、紙焼き写真を送るという手間が懸念材料だったと聞いています。
 それらの作品をモデラーのMAX渡辺さん、バンダイのガンプラ企画責任者の川口克己さん、編集長、担当編集者、本誌に関わっているカメラマン等7名が集まって、全員で応募素材写真を見て、合議制で大賞を決めていました。

━━最初から合議制だと審査に時間がかかりそうですね。

【舟戸】そうなんです。実際、2回目は800作品と、年々、応募数が劇的に増えていきまして、とても合議制では意見をまとめる時間が足らなくなり、10年ちょっと前くらいから、審査を2段階で行うようになりました。

 1次審査では編集部内で全作品をチェックし、1割くらいに絞り込み、2次審査では、毎回、10人くらいの審査員に各作品10点満点で採点していただき、合計点数が高い作品が大賞になるという方法をとっています。審査員にはプロモデラーの方にも入っていただいているのですが、いろいろな視点を取り入れたいので、毎回、メンバーはシャッフルするようにしています。

━━審査のポイントは?

【舟戸】基本的に作品のクオリティと何を題材にしているのかというネタを重視しています。具体的に言うと、模型として表面が美しく仕上げられているとか、塗装がきれいにできているとかという技術的な部分と、ネタとしての新鮮さや奇抜さですね。

■年々レベルは上昇 新しいことをやったパイオニアを高評価

━━今年で23回目の開催となりますが、作品のレベルや傾向に変化はありますか?

【舟戸】基本的に、どんどんレベルは上がってきている気がします。キットのクオリティもますます上がってきていますので、突出して上手な人以外の部分では、高いレベルで平均化されてきている印象があります。内容としては、初期の頃は、プラモデル化されていないモビルスーツがたくさんあったので、材料から自分で作るフルスクラッチの技術を使いつつ、市販されていないモビルスーツをいかに立体化するか、という感じで賞を狙ってくる方が多かったですが、それ以降は、流行の技法が生まれることが特徴でしょうか。    

━━流行の技法?

【舟戸】代表的なのものに、MAX渡辺さんが流行らせたことから「MAX塗り」と呼ばれるようになった黒を基調にその上から薄い塗料を重ねていってグラデーションをかけて立体感を出すという塗装技法がありますが、最近ですと、アニメの画面に出てくるモビルスーツの影の入り方や光のさし方を塗装で表現して、まるで絵のように仕上げた「アニメ塗り」という技法が流行り、そういう作品が増えた時期がありました。

━━なるほど。流行は審査に影響するのでしょうか?

【舟戸】パイオニアとして最初にやった人はすごく評価されますが、流行すると、同様の作品が増えますからね。目新しさもなくなるし、見る目も厳しくなるし、評価はどうしても辛くなりがちですね。

━━「オラザク選手権」だからザクのほうが有利?

【舟戸】実際のところ、大賞はザクのほうが多いですが、意図しているわけではありません。第1回はいきなりハイゴッグが大賞を獲っていますからね。ただ、以前は『ホビージャパン』は水陸両用モビルスーツが好きってよく言われたんですが(笑)、ウケる作品に方向性はあるので、大賞を本気で狙う方は、過去の大賞作を分析して、傾向と対策を練られていますね。

■“TOP OF ガンプラモデラー”に必要な資質は、アイデアと愛情

━━ズバリ、“TOP OF ガンプラモデラー”の資質は何だとお考えですか?

【舟戸】アイデアと愛情ですね。プラモデル全般にいえることですが、完成までもっていくのはすごくエネルギーがいるし、愛情や思い入れも必要なんです。まして、改造したり、フルスクラッチであったりすると、本当に計り知れないくらいのエネルギーがいりますので、とても敬意を持ちます。審査にあたるモデラーさんたちも、自分たちが作っているからこそ、その点が理解できるので、「よくぞ完成まで持ってきてくれた」というように、評価の対象になりますね。

━━今後、「オラザク選手権」をどのようにしていきたいとお考えですか?

【舟戸】これは雑誌の果たす役割として考えていることでもあるのですが、一番は、ひとりでも多くの人に模型を手に取ってもらい、作る楽しみを知ってもらいたいということ。なので、ジュニア部門を設けたように、裾野をできるだけ広げ、これから始めたいなという読者にもアピールできるようにしたいと思っています。あと、理想としては、今、Web応募は国内に限っているのですが、ワールドワイドにより広い地域から応募を募って、世界大会的なものができると面白いですよね。もちろん、海外の人に通じなくても名称は「オラザク」のままです(笑)。

━━最後に、来年、受賞を目指す読者にアドバイスをお願いします。

【舟戸】写真コンテストという特性上、どうやったら自分の作品をよく見せることができるか考えて撮られた写真がやはり加点されます。本誌で写真の撮り方講座の連載もしていますので、参考にしていただければと思います。あと、Webは10点まで、郵送は枚数制限がありませんので、見せ場がいっぱいありすぎて困る方は郵送応募で思い切りアピールしてください。愛情とエネルギーをかけて、ぜひ、完成を目指してがんばっていただきたいと思います。

取材・文/河上いつ子

#SNS #はるか #モチベーション


コロナ禍で応募数激増…ガンプラNo.1を決める『オラザク選手権』主催に聞く“TOP OF モデラー”の資質