「ほぼ違法」から「適時適法」の時代へ。ゲーム実況の過去・現在・未来を振り返る【CEDEC2020レポート】

 初のオンライン開催となったCEDEC 2020。3日目の9月4日に行われた「この1時間でゲーム実況業界の全てがわかる!?ゲーム実況の過去・現在・未来【2020年版】」というセッションではゲーム実況がもたらす「効果」や「影響」について語られた。

 今やその言葉も概念も一般的となった「ゲーム実況」。本セッションではゲーム実況の歴史の振り返り、関連人物・組織紹介などを行いながら、ゲーム実況に詳しい中田朋成氏の視点から、様々な事例を通して得た「ゲーム実況の可能性」が読み解かれていった。

取材・文/tnhr
編集/実存


中田朋成氏

ゲーム実況の強みは、「ゲームセンターCX」に凝縮されている

 最初の論点は、ゲーム実況が「販売に有益か否か」について。ゲーム実況が販売促進につながるかどうかについて、「すべてはやり方次第」であると中田氏は語った。

 まずは、ゲーム実況の簡易的な歴史が紹介された「ゲームセンターCX」は制作のプロが作っているコンテンツであるが、視聴者が真似したくなる要素がある。「有野課長の絶妙なゲームの実力があり、そしてスタッフはタレントとしてはトーク力のない素人であるけれども、キャラが立っているために面白い」と分析し、中田氏はこれがゲーム実況の強みである、と語った。

 その次はゲーム実況者から人気者が生まれ、実況者に価値が発生していった。黎明期のゲーム実況はガイドラインが無いためグレーな存在であったが、価値が発生していくことによってメーカーから公式に実況するケースが生まれていったとのこと。

 そして、「スタジオえどふみ」(現:スタジオNGC)が権利関係をクリアにして活動を開始し、「プロ」としてゲーム実況をする組織も誕生した。しかし、その後「スタジオえどふみ」と同じ用に権利関係を明確にしたフォロワーはあまり現れなかったという。

「ほぼ違法」から「適時適法」の時代へ

 そんな中、革命的な契機として「ゲーム機のシェア機能」が現れた。ここで合法的で手軽な実況が行えるようになったうえ、ゲーム実況に関するガイドラインが企業サイドから公式に発表されることに。さらに法人的なYouTuberやVtuberの配信者集団などの発生により、企業はゲーム実況に関する包括契約を結んでいくことになった。

 2020年の今はまさにそうした「適時適法」の時代への過渡期であり、ゲーム実況が行われるプラットフォームも多様化している。
 最近の事例では、Microsoftが開発したプラットフォーム「Mixer」などが紹介された。Mixerは業界トップクラスの配信者・Ninjaなどと独占契約を結んだが現在は閉鎖、その後Ninjaは配信の拠点をTwitchに戻したという。
 中田氏は、独占契約を結んだからといって配信者のファンもそのまま移行するわけではなく、プラットフォームごとの生態系が発生しているのではないかと推測している。

ゲーム実況の一般化

 機材や専門知識のハードルが下がり、ゲーム実況の一般化はさらに進んでいると中田氏は語る。権利的な問題がクリアになってきたことによって、表立ってゲーム実況を行えるようになったうえ、法人が実況者のサポートしてくれるケースも出てきた。

 一昔前のYouTuberは、メインチャンネルでBANされないよう、サブチャンネルでゲーム実況を行っていたが、2020年現在ではその状況はなくなりつつある。芸能人の実況者も多くなってきており、たとえば「すえひろがりず」という芸人は「M-1出場よりもゲーム実況の話題の方がネットの反応が良かった」といったケースが紹介された。

 またゲーム実況はeスポーツとも関わり始めており、スポーツと同じく「実況」や「解説」のプロとして局アナも参入しているという事例がある。スポンサー契約によって収入を得ていたプロゲーマーも、ゲーム実況を当たり前に配信するようになったという。

ゲーム実況のメリット:「作品を知るきっかけになる」「より詳細にゲームを伝えられる」「ユーザーのコミュニティ形成に役立つ」

 次は、ゲーム実況のメリット・デメリットについての説明がなされた。メリットとして上げられた要素は「作品を知るきっかけになる」「より詳細にゲームを伝えられる」「ユーザーのコミュニティ形成に役立つ」というもの。一方でデメリットとしては「逆に購入意欲を削いでしまう危険性もある」という点が挙げられた。

 「ユーザーのコミュニティ形成に役立つ」という要素の事例として、スタジオNGCのVR関連の活動が紹介された。
 そこでは実況者の「えどさん」が週替わりで様々なVRゲームをプレイするのだが、協力プレイを行う際には視聴者に呼びかけて一緒にプレイをする。その施策によって視聴者のVRデバイス購入が促進されており、その結果として視聴者内で「VR部」というコミュニティが発生。さらに、一部のユーザーは世界ランカーにまで上り詰め、番組に呼ばれレギュラー化するといったケースもあったとのこと。

 次は同じくスタジオNGCから『ファイナルファンタジーXIV』関連の活動の事例が挙げられた。実況コミュニティ内で「NGCクラフト委員会」という独自組織が生まれ活動領域が広がり、架空のクエストが作られたりした。さらに『FF XIV』開発者の吉田直樹氏に公式の番組内でプレイしてもらうという状況にまで発展した。
 また長期化タイトルに起きやすい「初心者の精神的ハードル」を乗り越えるための手助けをユーザーが行うこともあると語った。

ゲーム実況のデメリット:「逆に購入意欲を削いでしまう危険性もある」

 デメリットの「逆に購入意欲を削いでしまう危険性もある」という要素の例として挙げられたものが「某アイドルのゲーム配信企画」。
 その企画では初見プレイにもかかわらず、チュートリアルを飛ばしてしまったため、配信は訳の分からないまま終了してしまった。視聴者からも「よくわからないゲームだった」というコメントが散見され、中田氏は個人的にも残念に思ったとのこと。

 しかし、こうしたデメリットについても、その効果は「やり方次第」となる。「アドバイス役」を用意した別の配信では、同じゲームを扱ったのにも関わらず、興味を持った視聴者が増えたという真逆の結果になったという。

芸能人のゲーム実況参入の背景

 続いて、中田氏は芸能人のゲーム実況参入にも注目。その背景には、コロナ禍の影響やリモート出演の環境整備の進行があると指摘。 #狩野英孝など、芸能人が配信者としてブレイクするケースも増加している。日常的にリアクションやツッコミに慣れ親しんでいる芸人はゲーム実況と相性がいいのではないかと、中田氏は推測している。

 また最近では吉本興業が「ミルダム」で番組を配信するなど、芸能事務所ぐるみのeスポーツチームの結成が進んでいることにも注目した。中田氏はその背景として、出演者にはテレビに出ている知名度のある方が多く、感覚的には「ネットはテレビに対する2軍」という意識はなくなりつつあるのではないかと推測した。

 ゲーム実況のキャスティングには知名度は必要かという話では、「知名度以上に、面白く見せることが大切だ」という。知名度が高くても失敗すると、その視聴者数がそのままネガティブな方向で跳ね返ってくるためである。そのためにサポート役の抜擢や、ゲームのロケハンが重要でないかと指摘した。

デベロッパーやパブリッシャーなど「中の人」は関わるべきか否か?

 デベロッパーやパブリッシャーなどの「中の人」がゲーム実況に関わるべきか否か、という問題については中田氏「個人的にはやってほしい」と答えた。たとえば小島秀夫氏のように、「人」に愛着がわけば「作品」に興味が継続するからだという。
 また、そうした露出についても、いまや著名ゲームクリエイターの特権ではなくなりつつあり、ローカライズ担当者が配信に登場することもあるそうだ。

 むしろ、どんな立場であろうと、その人物の「素」が出ている方が視聴者の評判がよく、「自分の趣味全開でキャラクターを出していくことによって信頼と面白さを伝えることが効果的である」とのことだ。

 最後に中田氏は、「インターネットの世界はいい話だけではなく、ネガティブなもののほうが目立つという状況を残念に思う」と語る。ポジティブなコミュニティに属していたので、そういう良い部分に目が当たればよいという願いを込めて、講演を締めくくった。

「CEDEC 2020」公式サイトはこちら

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「ほぼ違法」から「適時適法」の時代へ。ゲーム実況の過去・現在・未来を振り返る【CEDEC2020レポート】