『ジャンプ』支える若手作家たち 呪術廻戦、アクタージュ…危機感あった編集部の新人発掘が奏功

 『週刊少年ジャンプ』(集英社)で先月、人気絶頂で完結した『鬼滅の刃』。作者の吾峠呼世晴(ごとうげ・こよはる)は、初めての連載でブームを巻き起こした。看板作品が1つ終わった中で「これからのジャンプは大丈夫?」と心配する声もあるが、アニメ放送が控える『呪術廻戦』や、多くの企業コラボや舞台化される『アクタージュ act-age』など、今、若手作家たちによる作品が人気だ。どちらも連載2年で漫画の枠を超える作品になったが、それは編集部が力を入れてきた“新人発掘”の努力の成果でもある。
■編集部が満場一致で連載決定した『呪術廻戦』 新人作家として異例の売上を記録
 まず、『週刊少年ジャンプ』連載の現状を伝えたい。10年以上続いているのは、『ONE PIECE』(ワンピース)と『HUNTER×HUNTER』(ハンターハンター ※長期休載含む)の2作品だけで、次に8年目を迎えた『ハイキュー!!』が続いており、『鬼滅の刃』は約4年で完結するなど、意外と長期連載が少ない。その中で紹介する2作品『呪術廻戦』は18年3月から、『アクタージュ』は18年1月から、ほぼ同時期に連載がスタート。まだ歴史が浅いのと、作者にとって同誌での初連載という点で『鬼滅の刃』と共通している。
 『呪術廻戦』は、ある強力な「呪物」の封印が解かれたことで、主人公の高校生・虎杖悠仁が、呪いをめぐる戦いの世界へと足を踏み入れるダークファンタジー。その人気は高く、コミックス累計発行部数は、アニメ化発表時(19年11月)は250万部、現在は450万部(5月20日)を突破。『鬼滅の刃』がアニメ化発表時(18年6月)に250万部、放送された19年4月時点で350万部(※3日後に発売された15巻で500万部)だったことを考えると、すでに多くのファンがいることがわかる。
 編集部によると、連載を決める会議で、オリジナリティーのあるストーリー、キレのあるセリフ、独特のキャラクター造形などが評価され、“編集部が満場一致で連載決定した”というエピソードを持つ期待作だ。驚くのは、第1巻発売後に即重版がかかり、第2巻が発売された18年9月に25万部を突破したことで、2巻の発売までに2度の重版を記録。デジタル版でも新人作家としては異例の売れ行きだと当時、説明していた。
 そんな作品を描いているのは1992年生まれの作者・芥見下々氏。14年に『神代捜査』(少年ジャンプNEXT!!)でデビューし、『ジャンプGIGA』(2017年)で連載していた『東京都立呪術高等専門学校』が、『呪術廻戦』のプロトタイプ及び正式な前日譚となっており、18年12月に『呪術廻戦 0巻 東京都立呪術高等専門学校』として発売。シリーズ累計450万部を突破しており、アニメが10月に放送されれば1000万部超えも現実的な数字となってくる。
■現実世界を巻き込む『アクタージュ』 作画担当は18歳でデビュー
 一方、『アクタージュ』は、91年生まれの原作・マツキタツヤ氏、97年生まれの作画・宇佐崎しろ氏による若手コンビで、17年に『週刊少年ジャンプ』で掲載された読切り『阿佐ヶ谷芸術高校映像科へようこそ』でデビュー。この読切りは、マツキ氏が『週刊少年ジャンプ』の原作志望者を対象にした漫画賞「第2回 ストキンPro」に応募したことが始まりで、同作が入賞し誌面での掲載権を得たことで、マツキ氏が作画担当として宇佐崎氏を指名しコンビが誕生した。読切りを描いた時、宇佐崎氏は弱冠18歳だったというから驚きだ。 そんな2人にとって初連載となる『アクタージュ』は、大手芸能事務所が主催する俳優オーディションの中で、異彩を放つ少女の主人公・夜凪景と鬼才の映画監督・黒山墨字の出会いから始まり、夜凪が役者として成長する姿を描いた物語。コミックスは現在累計300万部を突破しており、読切り『阿佐ヶ谷』の数年後を舞台にしている。
 CM、映画、舞台など夜凪が役者として活動する「芸能界」を描いている作品で、2022年に舞台化されることが決定しており、ホリプロ主催で夜凪役をオーディションで公募することが1日、発表された。現実世界の芸能界を巻き込んだ形だが、これ以前にも夜凪を実在の女優であるかの様に扱い、企業とのキャンペーンをする「女優化プロジェクト」が実施されていた。消防庁の火災予防啓発用ポスターのイメージガール、TSUTAYAの『SHIBUYA TSUTAYA 店長』、『週刊プレイボーイ』で初グラビアを披露するなど、アニメやゲーム化もされていない当時、知名度がまだ低い作品が、ここまでコラボできたのは異例と言える。
 その効果もあってか世間の評価や知名度も上々で、『第4回 次にくるマンガ大賞』(18年)コミックス部門では、『アクタージュ』が5位、『呪術廻戦』が6位。『第14回全国書店員が選んだおすすめコミック』(19年)では、『呪術廻戦』が1位、『アクタージュ』が3位と、そのほかの漫画賞でもノミネートされている。アニメ化、舞台化など展開していくにあたり、すでに十分な評価と人気が備わっている。
■ジャンプの初連載作品が続々と人気 編集部の新人発掘の施策が実を結ぶ
 先日、人気絶頂の中で完結した『鬼滅の刃』作者・吾峠呼世晴氏は、24歳の時に『鬼滅の刃』の前身となった読切り『過狩り狩り』で、『第70回 JUMPトレジャー新人漫画賞』(13年)佳作を受賞。その後、16年に自身初連載となる『鬼滅の刃』をスタートさせた。『呪術廻戦』『アクタージュ』と同じく新人作家が活躍した格好で、今、『週刊少年ジャンプ』は有望な若手が躍動していると言っていいだろう。 各出版社とも新人漫画賞を設けるなど新人発掘に力を入れているが、その中でジャンプ編集部は、一風変わった漫画賞で話題となった、絵の魅力「画力のみ」を評価する『ジャンプ PAINT 画力マンガ賞』を18年に創設。さらに、WEB・アプリ上の漫画投稿・公開サービス『ジャンプルーキー!』を14年よりスタートし、これまでに100人以上の作家を、ジャンプ各誌(週刊少年ジャンプ、少年ジャンプ+、ジャンプSQ.、最強ジャンプ、少年ジャンプ増刊)でデビューさせてきた。
 また、「面白いネームは描けるのに絵に自信がない…」「画力には自信があるのにネームはイマイチ…」という漫画家志望者の声に応えて、「ストーリー作り」と「作画」それぞれの能力に特化したプロを発掘するために創設したのが漫画賞『ストキンPro』『ガリョキンPro』。2つの賞で17人がデビューした。この中の1人が『アクタージュ』の原作・マツキ氏であり『第2回ストキンPro』の準キングを受賞し、今に至る。
 新人発掘に力を入れる理由について、『少年ジャンプ+』の籾山悠太氏は、最近の漫画事情として読み手と書き手の環境変化を挙げ「時代が変化しWEB上で面白い漫画を公開している作家が増えて、WEBで公開すればジャンプに掲載されるよりたくさんの人に読んでもらえる時代になった」とし「新人作家と出会える機会が減るかもしれない。雑誌を核にした人気漫画を生み出し続けるサイクルが崩れるかもしれない」という危機感から、新人獲得手段として先述の『ジャンプルーキー!』をリリースしたと説明している。(18年5月 トークイベント「ジャンプのミライ」にて)
 出版不況と言われる中、新人発掘に力を入れて、人気作品を世に送り出すことができた週刊少年ジャンプ編集部。現在、『ファイアパンチ』作者・藤本タツキ氏(27)の同誌初連載となる『チェンソーマン』も話題で、若手作家が順調に育ち、支えている。また、先のトークイベントで『週刊少年ジャンプ』編集長の中野博之氏は「コミックスが売れていなくてもみんなが知っているキャラクター、お金が儲かるコンテンツを作れる可能性はある。そこの未来をジャンプが作ります」と熱弁していたが、まさに漫画の枠を超えてアニメ化、舞台化が決まった『呪術廻戦』『アクタージュ』は、これに当てはまる。『鬼滅の刃』のように社会現象化するほどの大ヒットになるかは未知数だが、気鋭の若手が集う“ジャンプ新時代”到来となるか、今後も注目したい。

#ジャンプ #呪術廻戦 #発掘 #連載 #週刊少年ジャンプ


『ジャンプ』支える若手作家たち 呪術廻戦、アクタージュ…危機感あった編集部の新人発掘が奏功